わしは一旦、関係性のできた者まで、批判するから非情な人間だと
言われることがある。
人と会い、親密になり、情を通じ合わせたら、もう批判できない
という日本人の習性は、「コネ」という「世間」で生きてきた
日本人には骨がらみである。
「個人主義」が脆弱な日本人は、情を通じた関係性を壊せないから、
親交を温めたらべったりになる。
この考えは間違っているのではと思っても、口には出さない。
安倍首相がメディアと夜会食を行うのは、AKBの握手会と同じ
効果がある。
会って話をすること、相手から承認されること、情を通じ合わせる
こと、日本人はこれで相手への批判精神を失い、応援したくなる
ものなのだ。
わしはAKBの握手会には行かないが、メンバーからほんの少し
声をかけられたり、対談したり、会話を交わしたりしただけで、
情が芽生えて、この子を応援したいと思ってしまう。
多くのAKBファンが握手会でそう思うのだろうし、だからこそ、
この「会いに行けるアイドル」というシステムが、かつてない
強力な支持者を生み出す効果を発揮しているのだ。
こういう軟弱な精神は、AKBならお遊びだから罪はないが、
権力者にこの感覚を持つと、メディアや言論人としては
とんでもない堕落である。
言論人を堕落させる「会いに行ける首相」のシステムを、
安倍首相はメディア相手に利用している。
メディアとの夜会食もそうだし、フェイスブックでネトウヨに
媚びるのも、AKBシステムの悪用である。
自分に都合のいい意見を発表する者には、首相が直接、電話を
かけたりするから、言論人などはイチコロなのだ。
「会いに行ける権力」に利用されない「個人主義」を、
言論人は持っていなければならない。