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高森明勅
2014.6.16 14:00

「イラクでアメリカは上手くやれる」

イラク情勢がいよいよ無茶苦茶になって来た。

イラク戦争当時のことを思い出す。

たまたま、来日中のアメリカを代表する
「日本学」
の研究者に会う機会があった。

私が「フセイン政権を倒すのは容易でも、
その後が大変ではありませんか?」と問うと、彼は自信たっぷりに、
こう答えた。

「大丈夫です。イラクでアメリカは上手くやれます。
我々には日本で成功した経験がありますから」と。

これには、さすがに呆れ果てて、二の句が継げなかった。

戦前の日本をフセイン政権下のイラクと同様、
100%「悪玉」
としか見ていないのもさることながら、
日本学者のくせに「日本」
がまるで分かっていないからだ。

占領下の日本には、
立憲君主制のもとに統合された近代的国民が存在した。

その背景には、倭国から繋がる2000年近い国家の持続と、
縄文・弥生以来の1万年を超える文化的連続性があった。

昭和天皇の卓越した求心力に依存した占領行政の「成功」を、
イラクでも期待出来ると、日本学の専門家が信じていることが、
私には信じ難かった。

アメリカには、「他者」がまるで見えていないことを、
改めて痛感させられた場面だった。

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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