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高森明勅
2014.5.11 11:59

安倍首相側近の「女性宮家」発言

『文藝春秋』6月号に「時代を刺激する論客8人の本音」
という記事が載っている。

ジャーナリストの上杉隆氏が、
自民党総裁特別補佐・衆議院議員の萩生田光一氏、
日本文化チャンネル桜社長の水島総氏、
漫画家の小林よしのり氏、
民主党衆議院議員の前原誠司氏、
ジャーナリストの櫻井よしこ氏等8人に、
連続インタビューを行うという企画だ。

この記事には、「女性宮家」などを巡る言及もあるので、
いくつか紹介する。

例えば、思考停止型の典型例としてー
女系天皇に反対するのは日本の国体そのものが破壊されるからです
天皇がいればいい、皇室が存続すればいいというものではない」
(水島氏)という発言。

国民統合の中心に厳然と天皇陛下がいらっしゃり、
皇室が安泰に存続していて、それでも「破壊される」という
国体」って何なのか?

 しかも、その“妄想の国体”を守るためには、
天皇や皇室の存続「そのもの」を顧みなくてよい、
という考え方なのか。

本末転倒も甚だしい。

また、
「かつては、必要な血筋の方を天皇に据えるべく、
600年を遡ったこともある」(櫻井氏)
とのトンデモ発言まで、
そのまま活字になっている
(これまで最も血縁の離れた
前例は応神天皇5世の孫、
継体天皇の即位。約100年の隔たり)

これは、発言者自身の無知ないし妄想ぶりもさることながら、
インタビュアーの上杉氏も、天下の『文藝春秋』の担当編集者も、
担当校閲者も皆、
このとてつもない事実誤認に誰一人気付かなかった、
という事実に驚愕する。

興味深いのは、前原氏がこんな発言をしていることだ。

男系男子が望ましいのは一致しても、
それなら旧宮家を皇籍復帰させるかと言えば意見が大きく分かれます。
抽象的な議論と違って、
実際に生きている方々の
人物評価まで入ってきますから生々しい話
になる。
いろんな方からご意見をうかがいましたが、
ここでは言えないことはたくさんあります」と。

旧宮家系国民男子の新たな皇籍取得(皇籍“復帰”ではない!)

夢想する人たちは、先ずもって前原氏が「ここでは言えない」

されたその「生々しい」実情、
実態を正確かつ詳細に把握するのが
先決だろう。

しかも万が一、そのプランが政治日程に上るようなことになれば当然、
その「
たくさん」の「言えないこと」等も全て公開して、
国民的な議論の俎上に載せることが必要になる。

特に注目すべきは、安倍首相の側近中の側近とも
見られている
萩生田氏の発言。

天皇は男系男子が基本だと思いますが、現実問題として、
それでは将来的にどんどん道が狭まることは確実です。
宮家の跡取りは、ほとんど女子ですよね。
その方たちが結婚して家を出ていかれたら、
間違いなく宮家はなくなります。
そう考えれば、
婿をとる女性宮家もあってもいいように思います。
いまは側室を認めろといっても無理でしょうから、
その方が現実的です」

「伝統・文化・国柄は守るべきですが
最大限守ったうえで、現実に即していくという姿勢を
常に意識していきたいですね」ー

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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