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高森明勅
2013.12.30 05:32

安倍首相に「退路」はない

安倍首相は果たして、今後も靖国神社参拝を続けることが出来るか。

恐らく周囲は「中断せよ!」の大合唱だろう。

確かに、安倍氏が安全無事に政権を維持することだけを考えるなら、
さっさと参拝中断を決めるのが「賢明」に違いない。

すでに1度は参拝したのだから、保守層にも“いい顔”が出来た。

あとは、より幅広い国民の支持が得られる「経済」
問題に
専念すればいい。

アメリカの顔色を窺うなら、
それプラス「安全保障」問題に取り組めば十分。

その上で、中韓との摩擦は極力、避ける。

とくに、同じ資本主義陣営の韓国のご機嫌を損ねないように、
最大限の譲歩を行う。

でないとアメリカ様に「失望」されてしまうからだ。

それが政権亡者の最善の処世術だということは、
小学生でもわかる。

しかし、靖国神社参拝の3度目の中断が何をもたらすか。

国際社会は今度こそ、
靖国神社参拝は悪だと
強烈に印象付けられるはずだ。

だからこそ中断した、と。

今回はアメリカの国務省の、
それも報道官が「失望」という少し抑え目のコメントを
発表したに過ぎない。

それで一遍に中止に追い込まれたら、
日本がアメリカに果てしなく弱いことを晒すだけでなく、
日本は自らの非を悟って止めた」としか受け取られないだろう。

そこまで行かなくても、すぐに譲歩出来るようなことなのに、
近隣諸国との関係をぶち壊してまで、
どうして愚かに拘っていたのか、と見られるのは避けられない。

そうなると今度、参拝を復活するのは至難になる。

その時はホワイトハウスの、それも報道官ではなく、
大統領自身が明確に「反対」の意志を表面するかも知れない。

ロシアやASEAN諸国まで声高に反対の声を挙げるかも知れない

とにかく、ここで参拝を中断してしまったら
「地獄に堕ちる」と覚悟すべきだ。

安倍首相にもはや退路はない。

一時的にはアメリカからも風圧が強まるだろう。

それでも、不参拝の永遠の固定化という
最悪の事態を避ける為には、
粛々と参拝を続けながら、
アメリカや諸外国に丁寧に根気よく説明を行うしかない。

参拝を止めて説明しても、「もう済んだこと」と無視されるか、
止めれば止められるのに、何を拘るのか」と反論されて終わりだ。

かつて小泉首相は
アメリカの大統領に反対されても靖国神社参拝は続ける」
と明言していた。

勿論、反対されない見通しがあったからこそ、
こんなことを言えた、とも言える。

また、実際にアメリカ大統領が反対しても参拝を貫けたかは、
今となっては分からない。

だが少なくとも、
アメリカ大統領からの反対の可能性さえ
予め織り込みながら、
参拝を行っていたのは確かだろう。

戦没者なんて忘れてもいい。

首相は金輪際、靖国神社に参拝する必要はない、
というなら話は別だ。

だがそうでないなら、安倍首相はどんなに苦しくても、
智恵を絞り、勇気を奮って、
前に進むしか道はない。

千載に悔いを遺さない為に。

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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