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高森明勅
2013.11.19 13:43

伊勢神宮「遠隔」ガイドをやらされた

先日の朝方 、一人暮らしをしている長女からメール。
「今、
友達と伊勢神宮に向かっている」と。

そこで優しい親心で、少しばかり参拝の心得みたいなことを返信した。

のが間違いだったか。

「じゃあ、現地に着いて分からないこととかあったら、
その都度、
電話して聞くから」という話になってしまった。

その後、ほとんど1日中、度々電話が入り、
仕事の合間を縫って、
伊勢神宮の「遠隔」ガイドを
やらされてしまった。

ただ質問に答えるだけでなく、
「まず外宮からお参りして、予め『
せんぐう館』を拝観すれば」とか、
先回りしたナビ役も。

何と内宮では、あやうく五十鈴川の御手洗場(みたらし)

素通りしそうになるという、
信じ難いハプニングまで
フォローさせられる。

「だからねー、一旦、来た道を戻って…」

しかしどんな歩き方すれば、
御手洗場を見逃すなんてことが起こるのか。

ひょっとして多数の参拝者が、御手洗場に立ち寄らないで、
ぞろぞろそのまま通り過ぎてしまっているのか。

今年は恐らく“一見さん”が多いだろうから、それもあり得るか。

娘が特に興味を持ったのは「滝祭神(たきまつりのかみ)」。

御手洗場の近く、五十鈴川を背に右手やや上
の、
こじんまりとした垣の内側に、この神様は祀られている。

但し、お祠のようなものは何もない。

ただ石があるだけ。

古代の神宮を知る根本史料『皇太神宮儀式帳』(
西暦804年に成立)
にも、
この神は社殿がないことを特記してある。

まさに、我が国の神社の「原始の姿」を今日にとどめている、
と言ってよい。

遥か昔、第11代垂仁天皇の時代に天照大神が
五十鈴川のほとりに新たに祀
られることになる以前から、
この地に祀られていた可能性が考えられよう。

数多くの神宮所管社の中でも別格の扱いを受け、
荒祭宮(
あらまつりのみや)などの別宮に準じて、
丁重に恒例の祭祀が営まれている事実も、見逃せない。

神宮は由緒が古い分、謎も多いんだよ」
「でも、
いっぱいお参りしているのに、
誰もこの神様に気付いていないみたい。何だかもったいない」
心中、(御手洗場を通り過ぎそうになったお前が言うな!)
思いつつ、
心優しい父親は「うんうん、本当にそうだよなー」

穏やかに返したのであった。

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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