ゴー宣DOJO

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切通理作
2013.6.18 20:31

現場は一つではない

   先日のブログで話題にした、ツイッターで僕に、ゴー宣道場なんかで四の五の言ってないでデモの現場に来なさい!・・・・・・・と執拗にからんできた人は、16日に新大久保で、「在特会」との間の暴行事件で逮捕されてしまったようです。

 その人が逮捕された経緯については、よくわかってないので言及を控えますが、16日が近づく数日間の間、ツイッターで僕のタイムラインに入ってきた、新大久保に集まったら何かが起こるぞというような、ある種の熱気に浮かされたムードに、僕が違和感を持っていたのは事実です。

 そもそも、ヘイトスピーチが行われている場所は、そこで人々が生活している場所です。大騒ぎをして盛り上がるための場所ではないでしょう。

 そこに僕なんかまでが誘いに乗って押しかけて「いやースンゴイもの見ちゃった!」とかってたとえばこのブログで報告すれば、それが何かの役に立つのでしょうか?

 小林さんのブログで紹介されている、先日の道場参加者のアンケートにおける「現在では、子どもにネットを使うなというのは不可能に近いです。子どもを持てばわかります。それで、どうするか? 素直に見せて、常に親と世の中について、日常について議論をする、ということが必要なんです」という神奈川県の40歳女性(会社員)の方の声の方に、僕はずっと「現場感」を感じてしまいます。

 あるいは、「3月まで市福祉事務所で生活保護の仕事をしていました」という埼玉県の40歳男性(地方公務員)の「最近匿名で、何であの人が生活保護を受給できるのかとの苦情が多くなり、電話対応に追われて仕事にならない時が増えて来ています」というのは、まさにリアルな現場の報告です。

  どうしても入ってきてしまう情報をどう処理し、公にふさわしい物の見方を育てていけるのか、あるいは自分の仕事の現場でどう対応していけるのか・・・・・・というのが、まさに一人一人の現場なのだということを、アンケートを書かれた方々から今回も教わりました。

 「事件は現場で起こっている」。たしかにそうでしょう。しかしその現場は、いま自分達が生きているこの場所そのものなのです。

切通理作

昭和39年、東京都生まれ。和光大学卒業。文化批評、エッセイを主に手がける。
『宮崎駿の<世界>』(ちくま新書)で第24回サントリー学芸賞受賞。著書に『サンタ服を着た女の子ーときめきクリスマス論』(白水社)、『失恋論』(角川学芸出版)、『山田洋次の<世界>』(ちくま新著)、『ポップカルチャー 若者の世紀』(廣済堂出版)、『特撮黙示録』(太田出版)、『ある朝、セカイは死んでいた』(文藝春秋)、『地球はウルトラマンの星』(ソニー・マガジンズ)、『お前がセカイを殺したいなら』(フィルムアート社)、『怪獣使いと少年 ウルトラマンの作家たち』(宝島社)、『本多猪四郎 無冠の巨匠』『怪獣少年の〈復讐〉~70年代怪獣ブームの光と影』(洋泉社)など。

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