ゴー宣DOJO

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切通理作
2012.5.3 04:37

日本をハシズムから救うのはよしりんだけ!? 

 おりからの小林よしのり氏、中野剛志氏に対する煽りツイートの話題に加えて、橋下市長が「伝統的子育てによって発達障害は予防、防止できる」という条項を含む「家庭教育支援条例案」を提案する意思を固めたことで、「ファシズムではないか」といまツイッター上は騒然となっています。親の子育ての問題によって起こるものではない発達障害までをも「伝統」を強調する精神主義の明文化でなんとかしようという発想は、「伝統」の側にとっても、発達障害の子どもを抱える家庭にとっても、ハタ迷惑な話でしかありません。(註1)

 どうもこの人が「伝統」を口にすると、おかしな方向に行ってしまいます。

 大阪「都」構想にしても、外国人参政権容認論にしても、この人はもともと「国柄」という意識が希薄なまま人格形成されてきてしまったことが伺えます。そういう人が伝統を口にした時、国柄という安定した基盤がない分、形式主義に陥ってしまい、ファシズムに近いものに見えてしまうのです。国旗国歌の強制も同根に思えます。

 そんなことを言うと「小林よしのり氏の雑誌『わしズム』だって『ファシズム』が語源ではないか」と茶々を入れてくる向きもあるかもしれませんが、それは自分で名乗っているのです。橋下市長のように、名乗ってもいないのに「ハシズム」と批判者から言われるのとは、まるで違います。

 
 「ファシズム」の本来の意味は「束ねる」。日本においては、天皇陛下が国民の平和を願い、国民が国体というものを意識するという関係によって秩序維持のベースになると、私は小林氏の著書で学びました。

 「会ってもいい」と胸襟を開く小林氏に対し「お前が記者会見に来い」と言う橋下氏ですが、彼は自らに足りない「国体というものをどう捉えるか」ということについて、聞く耳を持つ必要があるのではないかと、僭越ながら思う次第です。

 小林さんは大阪府政の専門的なことまでいちいち知る必要はありませんが、橋下氏は日本の政治家として国体を知る必要はあるからです。

  政治家がなにもかも勉強してから施政に当たるわけではない、やりながら勉強していくこともある・・・・・・と橋下氏が言うのは、ある意味正しい。

  
 

 しかし橋下氏の評価されている部分が、国民を退屈させない、マスコミ受けする派手なマイクパフォーマンスの部分なのだとしたら、まさにそれこそが「爆弾を抱えたまま」活動を続ける諸刃の部分になるのかもと思いました。

 「テレビによく出てくる弁護士さん」から始まって、東京よりも歯に衣着せぬ発言が許容されてきた関西のテレビ番組を中心にポピュリズムの代弁者としてのオーラを身に付けてきた橋下氏。視聴者である大阪府民にとって「ツカミOK」なわかりやすい話だけを切り貼りしていけばそれでよかったのが、だんだん個々の問題の本質論に向き合わざるを得なくなってくる。「知らなかった」では済まされない問題も出てくる。

  大阪「都」構想だって、外国人参政権容認論だって、べつに国体を破壊しようと思いついたわけではないでしょう。受けると思って・・・・・・という言い方が悪ければ、府民のためになると思って打ちだしたのだと思います。

 
 

 小林さんだって、ギャグ漫画家が世の中に対して等身大からの発言をたまには言う・・・・というスタンスで始まった『おこっちゃまくん』という連載が発展して『ゴーマニズム宣言』となり、それが単なる批判力ではなく与党精神を身にまとうようになってきた。その後、自虐史観の相対化まで担うようになったのは当ブログにおけるトッキーさんによる昨日UPの文章『自爆していく橋下徹!』にある通りです。

 その後『天皇論』を出し、立憲君主であり祭祀王である天皇陛下が、国民のためにいつも祈り続けている存在であることの大切さを我々読者に認識させてくれました。

 橋下氏は、小林氏にこそ学ぶべきところがあるはずです。
 その大向こう受けするポジティブな部分を残して、国体とのバランスを取りながら提案実現していく今後の方向性が見えるのではないでしょうか。

※註1 本ブログUP後、この「家庭教育支援条例案」は市議団が勝手に作ったもので、「発達障害は親の教育環境のせい」という認識に関わる部分には今後自分は異を唱えていくと、橋下市長はツイッターで発言しました(午後8時7分注記)。

切通理作

昭和39年、東京都生まれ。和光大学卒業。文化批評、エッセイを主に手がける。
『宮崎駿の<世界>』(ちくま新書)で第24回サントリー学芸賞受賞。著書に『サンタ服を着た女の子ーときめきクリスマス論』(白水社)、『失恋論』(角川学芸出版)、『山田洋次の<世界>』(ちくま新著)、『ポップカルチャー 若者の世紀』(廣済堂出版)、『特撮黙示録』(太田出版)、『ある朝、セカイは死んでいた』(文藝春秋)、『地球はウルトラマンの星』(ソニー・マガジンズ)、『お前がセカイを殺したいなら』(フィルムアート社)、『怪獣使いと少年 ウルトラマンの作家たち』(宝島社)、『本多猪四郎 無冠の巨匠』『怪獣少年の〈復讐〉~70年代怪獣ブームの光と影』(洋泉社)など。

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