『産経新聞』(9月8日付)の社会面に「皇族議員選挙 常陸宮ご夫妻再選」との記事が載っていた。
この見出しを見た読者は、一瞬、不可解な印象を受けた人が多いのではないか。
「皇族議員」だって?と。
記事の内容は、皇室典範に規定された皇室会議(定員10名プラス予備議員10名)のメンバーの中の、皇族議員(2名)と同予備議員(2名)の任期(4年)満了に伴う選挙が、7日に実施されたことを伝えるもの。
結果は、見出しにある通り、議員には常陸宮殿下と同妃殿下が再選され、予備議員も秋篠宮殿下と三笠宮妃百合子殿下が再選された。
投票は、皇族方の互選による。
一般の選挙権をお持ちでない皇族方にとっては、唯一の投票の機会である。
この記事を読んだ人は、すぐ隣りにある「天皇、皇后両陛下ご動静」の記事と照らし合わせて、またまた不可解な印象を持た人もいたのではないか。
というのも、そこには、皇室会議の皇族議員の投票に、皇后陛下だけが参加されたことが、報じられているからだ。
天皇陛下は参加されていない。
だが、それは天皇陛下が他の皇族方より高い位置におられるので、皇室のメン
バーの単なる一員として投票に参加されるのではなく、もっと重大な役割を果たされるためだろう、と予想する人も少なくないかも知れない。
しかし、実際はそうではない。
皇室会議に参加する皇族議員は、専ら成年に達した皇族の互選によることが、皇室典範に規定されている(第23条第3項)。
そして、関連の規定はそれだけだ。
ということは、多くの人たちにとっては意外な事実だろうが、皇室会議において、天皇陛下の存在は、まったく除外されているということだ。
「皇族」とは、天皇陛下のご近親のことであって、陛下ご自身は、もちろん皇族ではいらっしやらない。
だから、皇族議員が皇族方の互選のみによって決められるというのは、天皇陛下がその選出に、一切、関わることが出来ない事実を示している。
これは、率直に言って、かなり奇妙なことではあるまいか。
そもそも皇室会議は、万一の場合の皇位継承順位の変更や摂政の設置、天皇・皇族男子の婚姻など皇室の重要事項を審議する機関だ。
なのに、皇室の「家長」と言うべき天皇陛下が、その会議に出席出来ないだけでなく、皇室から会議に参加する皇族議員を選出する手続きにすら、何ら関与出来ない。
天皇陛下を100パーセント除外した形で、皇室の重大事を審議・決定する皇室会議の現在のあり方は、普通に考えて、異常であろう。
更に、天皇陛下が排除される一方、10名の定員のうち、皇族2名に対し、4名は国会関係者(衆参両院の正副議長)が占め、議長は行政のトップである首相が務めるというのも、この会議での審議対象が皇室関係の事項のみに限定されている(第37条)点を勘案すると、首を傾げざるを得ない。
これを、旧典範における皇族会議と比較すると、そのいびつさは一層、明白だ。
皇族会議は、天皇陛下の親臨を原則とし、成年男子皇族によって組織され、それに内大臣・枢密院議長・宮内大臣・司法大臣・大審院長らが参列する形だった(旧典範第55・56条)。
メンバーを「男子」皇族に限定していたり、今では機構上の変更が見られる点はともかく、その基本においては、現代でも参考とすべき形ではないだろうか。
少なくとも今の皇室会議に比べ、よほどまともとの印象を持つのは、私だけだろうか。
ほとんど人々の関心の外にあるが、皇室の重大事を決する皇室会議の奇妙さは、もっと注意が払われてよいはずだ。