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高森明勅
2011.6.23 12:40

「天皇」をどう語るか

天皇を語る最も月並みで安易なやり方は、現在の制度の枠内のみで説明すること。

憲法をはじめ皇室典範以下の法令にどのように規定されているか、ということだ。

だが、そうした説明は忽ち行き詰まる。

例えば憲法の第1条に、天皇は「日本国の象徴」で、同時に「日本国民統合の象徴」でもある、と規定してある。

現行制度上、最も根本にある規定だ。

だが、天皇は何故こうした「象徴」であり得るのか。

この一番、初歩的な問いに対し、制度の枠内のみから答えを見出だすのは、不可能だ。

「国政に関する権能を有しない」(第4条)はずの天皇が、首相を「任命」したり、国会を「召集」したり出来るのは何故か。

これも、説明出来ない。

或いは、大きな災害があると、天皇陛下は被災地にお出ましになる。

でもそんなことは、憲法にも、皇室典範にも、どんな法令にも、規定がない。

ならば、何故お出ましになるのか。

当然、制度上の話ではなくなってくる。

どうしても背景にある「歴史」を視野に入れなければならなくなるのだ。

その「天皇と国民の歴史」を、出来るだけコンパクトに示そうとしたのが、近著『日本の10大天皇』。

私なりの視点から10人の天皇を選び、前後の歴史にも目を配って、出来るだけ平易かつ正確にまとめてみたつもりだ。

全然コンパクトじゃなく分厚いぞ!とお叱り頂くかも知れない。

だが、ある程度、言葉を尽くして説明しないと、却って分かりにくくなる、と弁解しておく。

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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