天皇を語る最も月並みで安易なやり方は、現在の制度の枠内のみで説明すること。
憲法をはじめ皇室典範以下の法令にどのように規定されているか、ということだ。
だが、そうした説明は忽ち行き詰まる。
例えば憲法の第1条に、天皇は「日本国の象徴」で、同時に「日本国民統合の象徴」でもある、と規定してある。
現行制度上、最も根本にある規定だ。
だが、天皇は何故こうした「象徴」であり得るのか。
この一番、初歩的な問いに対し、制度の枠内のみから答えを見出だすのは、不可能だ。
「国政に関する権能を有しない」(第4条)はずの天皇が、首相を「任命」したり、国会を「召集」したり出来るのは何故か。
これも、説明出来ない。
或いは、大きな災害があると、天皇陛下は被災地にお出ましになる。
でもそんなことは、憲法にも、皇室典範にも、どんな法令にも、規定がない。
ならば、何故お出ましになるのか。
当然、制度上の話ではなくなってくる。
どうしても背景にある「歴史」を視野に入れなければならなくなるのだ。
その「天皇と国民の歴史」を、出来るだけコンパクトに示そうとしたのが、近著『日本の10大天皇』。
私なりの視点から10人の天皇を選び、前後の歴史にも目を配って、出来るだけ平易かつ正確にまとめてみたつもりだ。
全然コンパクトじゃなく分厚いぞ!とお叱り頂くかも知れない。
だが、ある程度、言葉を尽くして説明しないと、却って分かりにくくなる、と弁解しておく。