「常に国民の関心の対象となっているというよりも、国の大切な折々に、この国に皇室があって良かった、と、国民が心から安堵し、喜ぶことのできる皇室でありたいと思っています」と。
その為に、普段から努めたい、とのお気持ちを、お示しになったのである。
で、今まさに「国の大切な折」。
両陛下は先頭に立って、被災地の苦難を「分かち合」っておられる。
既によく知られているだろうが、念のために若干の具体例を挙げよう。
皇居の宮殿を当分、閉鎖。
外国大使などの信任状捧呈式、閣僚などの認証式に限って、使用する。
御所でも、計画停電の対象外であるにも拘わらず、「自主停電」を実施しておられる。
那須御用邸(栃木県)の職員用浴場を避難者の為に開放。
御料牧場の卵、野菜、缶詰等を避難所に送られている。
3月16日には、ビデオメッセージを発表され、広く国民に被災地に心を寄せるよう呼びかけられたことは、印象に鮮やかだ。
30日には、東京都足立区の避難所にお出ましになり、床に膝をつかれて、全てのグループに直接、お声をかけて見舞われた。
この時、都の関係者の説明は省略し、予定時間をオーバーしてお見舞いに費やされたのは、被災者に寄せる陛下のお気持ちの端的な表れだろう。
被災地へは、1日も早く訪れたいと願っておられるが、そのことが却って現地の負担になってはならないとのお考えから、お出ましが可能になる時期を待っておられる。
なお、21日の「春分の日」、宮中では例年通り皇室の先祖祭りである春季皇霊祭が執り行われ、余震の危険もある中で、敢えてご代拝を排し、庭上という異例ながら、陛下ご自身が親しく拝礼をなさっている。
見落とせないのは、震災後も変わりなく皇居勤労奉仕が続けられていること。
奉仕団の内訳は確認していないものの、東京の人達だけとは考えにくい。
福島第一原発の事故による放射能の拡散を恐れて、著名人や外資系企業の関係者などが、続々と東京から逃げ出す中、皇居でのボランティアの清掃奉仕の為に、わざわざ各地から上京して来ているのだろう。
その奉仕団のメンバーに対し、陛下のご会釈(非公式のご引見)も平常通り行われている。
余り注目されていない事実だが、日本人の底力はこんなところにも、表れている。