ゴー宣DOJO

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切通理作
2011.1.11 07:29

小林よしのりさんの基調講演を聴いて

新春1月9日に行われた「第10回ゴー宣道場」は小林よしのりさんの基調講演でしたが、その内容で事前にわかっていたのは、他の師範方においても、道場ブログで公表されていることだけ。

いま我々は何を考えなければならないのかということと、それから「希望」につながるお話であるということ。
・・・・・・これしかわかっていませんでした。

そして当日、予定時間30分をオーバーした1時間もの基調講演を聴きました。
『新天皇論』表紙の天照大神が意味するものが、日本のこれからの展望にぴったりと重なった瞬間、震撼しました。
天皇は祭司王であり、本来農業の実りを通して民の平和を祈る存在。
その役割は決して形骸化するものではなかったのです。

当日の模様は近日動画で配信されるでしょうから、詳しくはそちらで見て頂きたいですが、日本が軍事でアメリカから気に入られなかった分を取り返すため、自給率を下げてアメリカに媚びを売ろうというTPP(環太平洋戦略的経済連携協定))への参加を拒否し、第一次産業を盛りたてて、女系天皇とともに「近代」を乗り越えよう……とは! まさに「転回」の思想ではないですか。

エコロジストのいうグローバル市民にとっての「自然との共生」ではなく、かといって高速道路だらけの日本でもない、土地を耕す足元を見つめる未来には展望があると思います。

小林さんが口にする「希望」とは、楽観的な展望ではありません。
このままでは完全に「絶望」だということの裏返しです。

すなわち、従来の近代化路線の延長上でこのまま「グローバル化自由貿易」の道を突き進んでいけば、そこには「絶望」しかない、と断言しています。
景気が回復することもないし、ごく普通の日本人が素朴に労働を尊ぶ毎日を送ったとしても、その見返りとしてそこそこの生活を送れるという保障が返ってくることもまた未来永劫ない。

近代化の恩恵を受けてきた過去にすがっている以上、あらゆる経済政策はその場しのぎの目くらましでしかないことが、ハッキリとわかりました。
これから新聞を開くとき、「識者」の言葉を聞くとき、政治家の世直し案に触れるとき、なにを基準にしていけばいいか、これでおのずと見えてくるでしょう。

小林さんが、愛子さまが天皇になる未来にはもう「わしは生きてないかもしれない」と言った時、客席に座っていた小学生男子が笑ってたのが見えました。
そう、最近ゴー宣道場で話題になっている年若い参加者です。前回には挙手をして発言した彼です。
その笑顔を見たとき、僕は瞬時に悟りました。
「彼の世代は、見ることが出来る!」

ゴー宣読者の厚い層の中に、いままさに「未来」を見たとき、僕はこう思わざるを得ませんでした。
「希望は、ある!」

切通理作

昭和39年、東京都生まれ。和光大学卒業。文化批評、エッセイを主に手がける。
『宮崎駿の<世界>』(ちくま新書)で第24回サントリー学芸賞受賞。著書に『サンタ服を着た女の子ーときめきクリスマス論』(白水社)、『失恋論』(角川学芸出版)、『山田洋次の<世界>』(ちくま新著)、『ポップカルチャー 若者の世紀』(廣済堂出版)、『特撮黙示録』(太田出版)、『ある朝、セカイは死んでいた』(文藝春秋)、『地球はウルトラマンの星』(ソニー・マガジンズ)、『お前がセカイを殺したいなら』(フィルムアート社)、『怪獣使いと少年 ウルトラマンの作家たち』(宝島社)、『本多猪四郎 無冠の巨匠』『怪獣少年の〈復讐〉~70年代怪獣ブームの光と影』(洋泉社)など。

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