『おぼっちゃまくん』のわしのペン入れがやっと終わった。
めちゃめちゃ神経、くたびれた。
出来上がった原稿を封筒に入れようとしたら、封筒が
見つからない。
妻に「ペン入れ終わったから原稿を入れる封筒をくれ」と
言ったら、自分が仕事中に頼まれたことにイラついて、
「仕事場から持ってきたときの封筒に入れればいいじゃ
ないか!」と言う。
真面目に朝から晩まで机にかじりついて描き上げても、
「おつかれさま」の慰労のひとこともなしで、いきなり
文句を言ってくる。
「持ってきた封筒の中に原稿が20枚あったら、そのうちの
10枚が上がった時点で、封筒に入れて返しているんだ。
残り10枚も上がった時点では封筒がなくなっている。
そういうこともあるんだ。どこかに封筒がないか探してくれ」
と、言葉を尽くして説明しなければならない。
この説明だけでも、わしは疲れ果てる。
するとその説明の途中で「分かった、分かった」と言葉を
遮る。ムチャクチャ腹が立つ。
妻は妻で、100歳近くの両親の精神的支柱にならねばならず、
老いゆえの病も抱えていて、躁鬱の差が激しくて同情もして
やらねばならない。
わしは常に自分の両親に感謝の念を捧げている。
「早く死んでくれてありがとう」と。
漫画家生活50年、老骨鞭打って、長時間の集中力で描いて
いるのに、妻にすら敬意を払われない男・それがわしである。
イエス・キリストが生まれ故郷に帰ったら、誰も自分のこと
なんか尊敬しないと聖書に記述があるらしい。
遠くから見ると、恐れ多いと崇拝する者だって、近くに
来れば来るほど、「なんだ、単なる足腰弱ったジジイじゃ
ないか」とマウントをとって見下すものだ。
長生きは危険だ。どこかで幕を引く準備をしなければ
ならない。そのタイミングはいつか?
人生まだまだ重大な課題があるもんだ。