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小林よしのり
2025.3.30 22:55日々の出来事

近くに来れば来るほど、なんだこんな奴かと、敬意を払わない。

『おぼっちゃまくん』のわしのペン入れがやっと終わった。
めちゃめちゃ神経、くたびれた。
出来上がった原稿を封筒に入れようとしたら、封筒が
見つからない。

妻に「ペン入れ終わったから原稿を入れる封筒をくれ」と
言ったら、自分が仕事中に頼まれたことにイラついて、
「仕事場から持ってきたときの封筒に入れればいいじゃ
ないか!」と言う。

真面目に朝から晩まで机にかじりついて描き上げても、
「おつかれさま」の慰労のひとこともなしで、いきなり
文句を言ってくる。

「持ってきた封筒の中に原稿が20枚あったら、そのうちの
10枚が上がった時点で、封筒に入れて返しているんだ。
残り10枚も上がった時点では封筒がなくなっている。
そういうこともあるんだ。どこかに封筒がないか探してくれ」
と、言葉を尽くして説明しなければならない。
この説明だけでも、わしは疲れ果てる。
するとその説明の途中で「分かった、分かった」と言葉を
遮る。ムチャクチャ腹が立つ。

妻は妻で、100歳近くの両親の精神的支柱にならねばならず、
老いゆえの病も抱えていて、躁鬱の差が激しくて同情もして
やらねばならない。

わしは常に自分の両親に感謝の念を捧げている。
「早く死んでくれてありがとう」と。

漫画家生活50年、老骨鞭打って、長時間の集中力で描いて
いるのに、妻にすら敬意を払われない男・それがわしである。
イエス・キリストが生まれ故郷に帰ったら、誰も自分のこと
なんか尊敬しないと聖書に記述があるらしい。

遠くから見ると、恐れ多いと崇拝する者だって、近くに
来れば来るほど、「なんだ、単なる足腰弱ったジジイじゃ
ないか」とマウントをとって見下すものだ。
長生きは危険だ。どこかで幕を引く準備をしなければ
ならない。そのタイミングはいつか?
人生まだまだ重大な課題があるもんだ。

小林よしのり

昭和28年福岡生まれ。漫画家。大学在学中にギャグ漫画『東大一直線』でデビュー。以降、『東大快進撃』『おぼっちゃまくん』などの代表作を発表。平成4年、世界初の思想漫画『ゴーマニズム宣言』を連載開始。『ゴーマニズム宣言』のスペシャル版として『差別論』『戦争論』『台湾論』『沖縄論』『天皇論』などを発表し論争を巻き起こす。
近刊に、『卑怯者の島』『民主主義という病い』『明治日本を作った男たち』『新・堕落論』など。
新しい試みとしてニコニコ動画にて、ブロマガ『小林よしのりライジング』を週1回配信している。
また平成29年から「FLASH」(光文社)にて新連載『よしりん辻説法』、平成30年からは再び「SPA!」(扶桑社)にて『ゴーマニズム宣言』、「小説幻冬」(幻冬舎)にて『おぼっちゃまくん』を連載開始し話題となっている。

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第122回 令和7年 4/20 SUN
14:00~17:00

テーマ: ゴー宣DOJO in横浜「ウクライナ戦争と国際法の行方」

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