先日公開された「令和7年3月10日 天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議に基づく政府における検討結果の報告を受けた立法府の対応に関する全体会議」の議事録を一通り読みました。
各党議員の発言にも色々感想はありますが、今回特に「なんじゃこりゃ?」となったのが、山﨑重孝・内閣官房参与・皇室制度連絡調整総括官の答弁。
はっきり言って、論理破綻や支離滅裂に溢れた極めてポンコツな答弁です。
東大卒で、事務次官という官僚にとって頂点のポストまで務めた人に対してお前ごときが!と言われるかもしれませんが、議事録を読むとハッキリわかる事実なのだからしょうがない。
だけど、全体を読むとそうなった「理由」がわかります。どれだけ「優秀」な頭脳を持った人でも、課せられた「前提」がそもそもおかしく、それを擁護するための強弁を行えば、そりゃあ支離滅裂のポンコツにもなりますよ。
その「おかしな前提」にあたるのが次の部分。
まず、有識者会議においては、悠仁親王殿下までの皇位継承の流れをゆるがせにしないという前提をつくりましたので、皇位継承についての直接的なロジックは取っていないわけでございます。要は、悠仁親王殿下が天皇陛下になられたときに、それをお支えする皇族の方々がいらっしゃらない事態をどうするかというふうに問題設定をしましたので、どの方が皇位継承して、どの方が皇位継承しないというふうなロジックを取っていないわけでございます。
ここで挙げられた有識者会議は令和3年のものですが、元となる問題が「将来皇族が悠仁さまだけになってしまう=皇位継承が高確率で途絶えてしまう」事なのに、テーマの本質である安定的な皇位継承について「直接的なロジックは取っていない」という、会議の致命的な欠陥を吐露してしまっています。
元となるインプット(前提)がポンコツで、それを正当化しようとしたら、いくら優秀な頭脳を通してもアウトプットもポンコツになりますわな(実は本人も自覚してて、自分を守る予防線として上の発言をしたのでは、と私は思っています)。
具体的なポンコツ箇所を挙げて行きましょう。例えば、馬淵澄夫議員が「皇統男系男子に限って養子にする」という入口の部分の是非を問うた事に対して、
現皇室典範ですと摂政だとか、あるいは、これは臨時代行の法律でございますが、天皇陛下が国外に行かれたときに代行するという方々は、基本は皇室内の男系男子の方になっておりまして、男系女子の方もございますが、男系の方々になっておりまして、妃殿下方は、基本は、皇后様、皇太后様、太皇太后様以外は摂政にはならないふうになっておるわけでございます。そういうことを考えますと、いろいろな公務全てのことを支えていただくような皇族の方ということになると、男系男子というところを入口にすることがよろしいのではないかという議論になったところでございます。
と答えています。
皇后、皇太后、太皇太后、そして男系女子(内親王・女王のこと)がなれるんだったら、男系男子限定の理由に全くならないじゃん!
しかも摂政は「既に皇族である方」が就かれるのだから、出生児からの一般国民を皇族にするという養子案においては、むしろ否定のロジックとしての方が説得力を持ちます。
一時が万事、男系男子固執という「前提」から強弁するので、木蘭さんのブログでも取り上げられていた記事の元となる次のような答弁が出てきます。
皇室典範におきましては皇族の養子縁組は禁止されておりますので、現状において養子縁組をなさるお気持ちがあるかどうかという話になると、違法な行為を前提にそのお気持ちがあるかどうかという話になっていくであろう。そういうことについて、政府として、国会の意思が決定していない中でそういうことの確認をするというのは、なかなかしにくいのではないかというふうに考えたわけでございます。
前もって施行後に効果があるかの調査ができなかったら、あらゆる立法や法改正は全て不可能(無意味)になります。この人は自分がどれだけバカな事を言っているか絶対にわかっていると思いますがね。
そして、生まれながらの一般国民が養子として皇族になった例は無い事には次のように答えます。
一般国民になって、誰かの養子になることで戻ってくるというケースがぴったりあるかどうか、それはなかなかそうではないと思います。むしろ、私どもの思考方法は、普通の国民が許されている部分について解除することによって皇統の方々に皇室を支えるような皇族になっていただくことはどうか、それが国民の理解を得られやすいのではないかという思考方法をたどった結果でございます。
これはそのまま、普通の国民に対してであったら許されないような男系男子限定という観念の否定にもつながりますし、どの調査でも養子案より女性・女系天皇容認の方がはるかに高い支持を得ているという現実の前では「即終了」の言説でしかありません。
無理筋の強弁に疲れてきたのか、しまいには自身の「お気持ちの表明」になってしまう始末。
これは少し情緒的な話になりますが、昭和天皇の皇后陛下でいらっしゃいました香淳皇后様は、久邇宮家の出でございまして、現在の伏見宮系統の部分のかなりの家が久邇宮家の系統でもあるわけでございます。そういった意味からすると、上皇様とか天皇陛下からいたしますと、自分のお母様の実家とか自分の御祖母様の実家という部分は、結構、これは女系の血でございますが、近い部分があるのではないかというふうに考えたわけでございます。
これ言い出したら、今上陛下の子である愛子さまという「これ以上無く近しい存在」を排除する理由が無くなります。この答弁を見たら、「前提」で男系男子固執している者以外は、「養子案」の正当性が完全に崩壊したと感じるでしょう。
先の引用にもあった通り、令和3年の有識者会議報告書には「皇位継承についての直接的なロジック」がありません。一方、平成17年の有識者会議報告書には「直接的なロジック」である女性・女系天皇容認が盛り込まれています。
「前提」にするべきはどちらなのか。イデオロギー抜きで考えたら、あまりに明確ではないですか。
山﨑参与のポンコツ答弁で、男系男子固執のゴリ押しがいかに無理筋であるか、改めて明白になりました。第4回の全体会議に向け、もっともっと国民の声を発して行きましょう!