倉山満の新著『皇室の掟』では、
万世一系の系図の上に「正統(しょうとう)」の
ラインが引かれている。
中世では、
正式に天皇になった方を「正統(せいとう)」といい、
男系男子孫が皇位を継承していった天皇・皇族を
「正統(しょうとう」というのだそうな。
神武天皇の伝説以来、皇位の男系継承を続けていったと
倉山は言っているから、
この「正統(しょうとう)」こそ、万世一系の証と
言いたいのだろう。
実際、今上天皇から神武天皇まで、
「正統(しょうとう)」のラインがきれいに
1本の線でつながっている。
が、かなり無理がある。
まずは欠史八代。
本当に実在したかどうかもあやしいので、
この時点ですでに「男系継承」などと言い切れない。
フツーに考えたらわかる。
次、26代継体天皇。
10人の天皇を差し置いて、
傍系4代を「正統(しょうとう)」。
こちらは仁賢天皇の娘である手白香皇女と結婚して、
ようやく体裁を保ったのだが、
倉山は「男系を女系で補完した」などと、
あくまで男系メインの思考回路。なんでだ。
「皇位」の女系継承である
元明・元正天皇はどうかと思えば、びっくり。
元明天皇どころか、天武・持統天皇すらすっ飛ばして、
天智天皇(38代)→施基親王→光仁天皇(49代)。
えええ〜。
「元明→元正」の流れを男系継承だと強弁するのは
元正天皇のお父さんが草壁皇子だからなのだと
思っていたけど、いや、ナナメ上からのウルトラC。
皇室に詳しくない人でも、
「え、それってアリ!?」と首を傾げるレベルだ。
もはや、天皇が誰で、どのような事績があったのかなど、
倉山にとってはどうでもいいらしい。
念頭にあるのは「男の血」。ひたすら「男の血」。
それも、「一般人の男を皇族にしないのが皇室の掟」
という持論をごり押しするためだけに。
何が何でも男系継承なのだという結論ありきで、
後付けで線を引いたらこうなりました、
という話でしかない。
それぞれの時代に、それぞれの事情があって、
何とか苦肉の策で(あるいは時に争いつつ)、
男も女も力を合わせて皇位を継承してきた、
と見るほうが自然だと思うけど。
男の血をそこまで絶対視するのは、Y染色体信奉者か、
「男はタネで女はハタケ」の男尊女卑のどちらかしかない。
もっとも、女の私からいわせれば、
歴史上の人物の系譜がキレイに連なっているからと言って、
純粋にその父親と子供の血がつながっていると
信じ込めるお花畑が初々しすぎて痛々しい。
(もちろん物語としてはあっていいと思うけど、
それを掟と言い出すに至っては・・・ダイジョウブ・笑?)
人間を知らないとこうなる、の見本かと。
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