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2025.2.18 07:00ゴー宣道場

徹底比較『フランス革命の省察』の訳し方⑩ 頭山満と通底する締めの言葉

徹底比較『フランス革命の省察』の訳し方⑩ byケロ坊

いよいよ今回最終回!!

 

 

18.頭山満と通底する締めの言葉

 

そして『フランス革命についての省察』の締めです。まず頭山満の言葉はこちらです。

 

大東亜論

「国家というものは、一つの大きな乗り合い船のようなもので、片方できれいな花が咲いていたり、景色がよかったりすると、皆そのほうに集まり、そのために船は傾き、ついには船が転覆する。だから俺はいつも人の行かぬ側の舷に頑張って船を傾けないようにしたいと思っている。」

 

以下が『省察』です。

 

佐藤健志版(PHP研究所)
「自由も度を過ぎれば、社会という船を一方にばかり傾け、転覆させてしまう危険をはらむ。そんなときは、わが理性の錘(おもり)を反対側、すなわち秩序のほうに移したい。この錘はささやかなものにすぎないが、揺らぎかけたバランスを少しでも回復したいのである。」

 

二木麻里版(光文社文庫)
「自分が乗っている船の積み荷がいっぽうに偏りすぎて均衡が危うくなったときは、そのつりあいを保てるように自分の理性の持つ小さな重みでも役に立てようとする人間です。」

 

中野好之版(岩波文庫)
「彼の乗り組んだ舟の均衡が万が一にも一方への積荷の偏在で傾く危険が迫るならば、自分のささやかな理性の重みを平衡を確保すべき側へ移そうとする人間である。」

 

水田洋版(中公クラシックス)
「かれが乗っている船の均衡が、一方に積荷をしすぎて危険になるようなときには、その均衡を保つほうに、かれの理性というささやかな重量を運ぶことをねがっている。」

 

佐藤版は、度が過ぎた「自由」を批判した上で、「秩序のため」と言ってしまっていますが、秩序だったら独裁国家や管理国家でもありますし、バークは権力の手先にはならず、暴政には怒ったと言ってるのだから、バークを秩序至上主義者とする締めは短絡的に感じます。

他の訳では、船という国家のバランスを保ちたいとだけ書いているので、原文の方がより頭山満の考えと近いことがわかりました。

そしてやはり、国家という船の航行には、バランス感覚を働かせなければならないということを、わかりやすくはっきりと言っている頭山満の凄さは際立っています。

もちろんそれは固執とは正反対の姿勢であり、男系固執は自民党だろうが日本会議だろうが神社本庁だろうが渡部昇一だろうが八木秀次だろうが竹田恒泰だろうがニセの保守なのです。

 

比較は以上になります。

結論としては、かなり意訳が入っていて新訳というより超訳・要約版の域ですが、とにかくわかりやすさを求めるならPHPの佐藤健志版、

原本に忠実かつ読みやすさで言えば光文社文庫の二木麻里版、

さらに直訳に近く、「prejudice」「偏見」と正しく訳しているほとんど唯一のものが岩波文庫の中野好之版、という感じでした。

もちろんここで挙げたもの以外にも『フランス革命についての省察』の翻訳本はあります。

ひとまず世代が進むと、怪しい読み方、強引な訳し方をする人も出てきてしまうという現実が見えたのはよかったです。

『パール真論』はそういう本でした。

有名な歴史的人物には解説本もよく出ていたりしますが、今後は自分も気をつけたいと思います。

 

そしてこの企画を通して、さらに保守への理解が深まりました。

エドマンド・バークは王政を守るためにフランス革命(左翼・極左)を批判したのであって、革命派の逆張りをしたいから王政を持ち出したのではありません。

今の自称保守は左翼の逆張りをして自分が保守になりたいから男系固執を言っており、すなわち自分のためであって、だからこそニセなのです。

自称保守・ネトウヨは男系派である限り詰んでいて、未来はありません。フランス革命に血と独裁の未来が待っていたように。

これまでに男系派の自称保守・ネトウヨがやってきた政治的な男系固執言動や活動、その何もかもが、フランス革命と同様に無駄であり、害悪だったのです。

『フランス革命についての省察』を今の皇位継承の危機に照らせば、やはりこの結論しか出てきません。

 

 

「皇位継承の危機から見た『フランス革命の省察』
~男系派が全然保守ではない23の理由」

第1回
プロローグ
1.保守は逆張りではない
2.言葉の中身、論理の有無

第2回
3.設計図の欠陥を指摘すること
4. 「人権はヤバイ」と230年前から言われていた
5.「国をどう動かしていくか」という国家観
6.王と伝統との関係

第3回
7.   王室や伝統だけでなく、キリスト教も弾圧して貶めたフランス革命
8. 「Revolution」は全然カッコいいものじゃなかった
9. 「理性主義」の危険さ
10. 福澤諭吉との共通点(保守としての生き方)
11. 革命派の女性差別に怒る保守主義の父

第4回
12.「オレ様が啓蒙してやる」という態度は非常識なもの
13.固執と改善の話
14.『コロナ論』との共通点
15.愛郷心の大事さ
16.「自由」の意味
17.固執は無能の証

第5回
18.思いっきりリベラルなことも言ってた保守主義の父
19.革命派をカルトに例えるバーク
20.男系闇堕ちした石破と、妥協が技らしい野田のことも言われてる
21.国体を保守すること
22.歴史を省みない“うぬぼれ”
23.頭山満との共通点

 

徹底比較『フランス革命の省察』の訳し方
第1回
1.「人権は爆弾」と言ってるところ

第2回
2.革命派・人権派による王室否定と女性差別の指摘
3.「prejudice」の訳し方

第3回
4.常識が失われることへの警戒
5.困難に立ち向かうこと

第4回
6.自国の歴史を省みないのはうぬぼれ
7.迷信に執着するのは保守ではない

第5回
8.政治家への評価の基準
9.『コロナ論』とも共通する病気への対処法について

第6回
10.「バランス感覚」という言葉の有無
11.愛郷心の大事さ

第7回
12.革命派は“賢者の石”詐欺に遭った人と同類
13.「啓蒙」という詐欺行為

第8回
14.無制限な自由への批判
15.迎合した人のその後

第9回
16.圧政への抵抗と自由の支持の表明
17.固執は保守ではないこと

 


 

 

ケロ坊さん、大変な労作、どうもありがとうございました!
名著の「訳書」には注意が必要だということは、大変新鮮で重要な指摘であり、その事実をここまで丹念に検証したことは本当に素晴らしいと思います。

最後に『パール真論』について触れられてますが、実は「パール判決書」には正式な訳文すら存在していません。それもまた大問題だと思いますが。

ともかく「徹底比較『フランス革命の省察』の訳し方」、これにて完結です。
ぜひいま一度読み返して、「保守」について考えてみてください!!

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テーマ: ゴー宣DOJO in大阪「天皇は双系が伝統である!」

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