青山繁晴は常々、「男系・女系」という語を「父系・母系」と呼び替えるよう主張しています。「男系男子に限定」という規定が現代の価値観と相容れない事を認識しており、呼び替えにより印象操作を行いたいのでしょう。
そして、現代の価値観との齟齬を強引に押し切るためのキーワードとして「伝統」を用いています。逆に言えば、「伝統である」と強弁する以外に男系男子固執を正当化できる理屈はなく、だからこそ(前回の記事でも述べたように)昭和天皇、上皇陛下、今上陛下が築いてこられた「現代の天皇像」を完全に無視するしか無いのでしょう。
しかし、提言書の中で用いられている「伝統」についての記述は、明らかな誤りやミスリードにあふれています。
一例を挙げてみましょう。例えば次の記述
女性天皇と女系天皇はどう違うか。 女性天皇は過去に十代八人、いらっしゃった。いずれも即位後は結婚なさらないか、子をもたれず、男系・父系の男子に皇位を継承された。
まず、元明天皇→元正天皇は母から娘への継承なので「男系・父系の男子に皇位を継承」は明確な誤り。
そして「即位後は結婚なさらないか、子をもたれず」の部分。子がおられた女性天皇の即位時の年齢を並べると
推古天皇:39歳
皇極(斉明)天皇:48歳
持統天皇:45歳
元明天皇:46歳
「即位後に子をもたれなかった」のは、単に年齢的なものだとわかります。
先日紹介した動画の中で青山繁晴は、愛子天皇を望む者は愛子さまに生涯独身を望むのか!という脅迫を何度も繰り返しますが(男系カルトの定番セリフですね)、そんな事を言っているのは男系固執者だけであり、脅しのためにミスリードを誘うという不誠実極まりない論法が繰り返されます。
そもそもが
男系による皇位継承を、いかなる例外もなく、126代一貫して続けてきたのが日本の伝統である。
という決まり文句は「欠史八代」の存在により確認不可能である上に、一貫して「男系」が絶対的な価値観であったなら、それが崩れる危険を伴う女性天皇自体が存在し得なかったでしょう。
この「提言書」は、隅々に渡るまでが皇統問題の議論の中で論破され尽くした内容ばかりですが、実は最大の欺瞞は「皇位継承の安定への提言」というタイトルにあります。
提言書が示している方策は、結局の所「旧宮家を先祖に持つ男子を皇族にする」という「1回コッキリ」の手段だけ。「ひとときの時代の価値観や判断で断絶することは許されない」などと豪語していながら、完全に今現在のその場しのぎしか考えられていません(だから、特例法でというインスタントな形を用いようとするのでしょう)。
そのスタンスが、いかに「日本の尊厳と国益」を損ねているか、この会に所属している議員は気付かないのでしょうか?
少なくとも、ここの名簿に名前のある議員は、本当は「伝統」と向き合う精神など持ち合わせていない、早々に国政の場から退場してもらう必要のある面々です(それにしても「非公表」って何だろ?この会がおかしく恥ずかしいものである事は認識しながら、世間の付き合いには背けないヘタレ?)。
ところで、「日本の尊厳と国益を護る会」所属、過去に比例復活でしか当選が無く、先日の総選挙で落選した谷川とむが会長をつとめていた(落選で辞任)自民党大阪府連の新会長に青山繁晴が内定したとか。
自民は、そんなトンチンカンな見識だから維新に大阪を牛耳られちゃってるんじゃないですか?