アフガニスタンで水路や井戸を掘る人道支援に尽力していた中村哲医師が、現地で何者かに銃撃され殺害されてから12月4日で5年が経ちました。
各メディアでは、現地で行われた追悼式などが報じられています。
どの記事も、中村氏の足跡や、現在も志が引き継がれている事などが書かれ、それはそれで良いのですが…。
その一方、中村氏が活動してきたアフガニスタンがどんな状況で、そもそも何故そうなったかの経緯について、どのメディアも全くという程触れていません。
これでは単に「人道活動をしていた人が撃たれて可哀想」「だけど志は受け継がれている」という、単純な「良い話」として消費されてしまいます。
まだ未見の方は、ぜひゴー宣2nd Season4巻収録の「第79宣言 中村哲とアフガニスタン・ペーパーズ」と、2003年に行われた対談の再録「アフガンの真実対談 メディアのアフガン報道は嘘とインチキだらけ 中村哲✕小林よしのり」を読んでほしい。
この中で中村氏は、アフガニスタンに対する米国の攻撃と統治が「成功した」と言われていた事について
と否定しています。
ご自身の言葉を裏付けるように、中村氏は10数年後に現地で殺害されてしまう。
そこには、元々は親日的だった現地の感情が、日本が「アメリカの子分」として戦争に加担する事で変化していった事など、我々が対峙しなければならない要素が山のように存在します。
中村氏の死は「どこか遠くの危険な場所」でおきたのではなく、日本国内に生きる我々と完全に「地続き」の場所でおきたのです。
そういえば、この対談の初出である「わしズム」Vol.7は、
よしりん先生が原爆ドームの中に佇む衝撃的な表紙。ちょうど先日、ゴー宣DOJO in広島「原爆の悲惨さはなぜ伝わらないのか?」に併せて再読しました。
平和記念資料館の展示がマイルドになった事と、アフガンの状況や経緯に全く触れない各メディアの記事には、どこか似たような「空虚」を感じてしまいます。
「悲惨さの本質はなぜ伝わらないのか」これは戦争関連に限らず(もちろん自分自身を含めて)物事を人に伝えようとする者に課せられている、怠ることの許されない重大な「宿題」なのだと思っています。