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笹幸恵
2024.10.31 01:24皇統問題

葛城氏は国連の中心で「側室復活」を叫べ

女性皇族による皇位継承を認めていない皇室典範の
改正を勧告した国連女性差別撤廃委員会。
早速これに反発する声が上がっている。

下記リンクは産経新聞の記事。
葛城奈海氏「国家の基本崩すな。毅然とスルーを」


この葛城氏、NGO関係者がスピーチを行った会合に
着物で登壇、35秒のスピーチを行っている。

「天皇は祭祀王だ。ローマ教皇やイスラムの聖職者、
チベット仏教最高指導者のダライ・ラマ法王はみな男性なのに、
国連はこれを女性差別だとはいわない。なぜ日本にだけそのように言うのか」

もうこの時点でツッコミどころ満載だ。
ローマ教皇以下、国連女性差別撤廃委員会の欺瞞を指摘するのは結構だが、
天皇は現在、日本国憲法において「国民統合の象徴」である。
日本国民は男しかいないのか? 違うだろう。
国民の半数が女なのに、統合の象徴である天皇が男性に限定されている。
国連女性差別撤廃委員会の改正勧告は妥当である。
自称保守は「これが日本の伝統だ」と言うだろうが、
男系男子限定は明治憲法で初めて規定された近代以降の制度に過ぎない。
日本の伝統云々をいうなら、側室を復活しろと声高に叫べ!
側室がいなければ男系男子の継承は困難なのだから。

ちなみに現憲法下では、天皇の祭祀は私的行為とされている。
ほかに、憲法で定められた国事行為と公的行為がある。
国事行為は、内閣総理大臣を指名するなど(他多数)。
公的行為は外国を訪問することなど(他多数)。
それを「祭祀王だ」といって、ローマ教皇やイスラム聖職者、
ダライ・ラマと並列で述べるのはあまりに乱暴過ぎる。
葛城氏は国事行為や公的行為のことを知らないのか?
知っていて「祭祀王」と断言かつ公言しているのなら、
天皇の他の仕事をあまりにも軽んじていると言わざるを得ない。
「我こそ尊皇心の塊」と言いつつ都合のよいロボット扱い、
自称保守あるあるだ。

さらに、仮に「祭祀王」だとしても、
日本の古来からのあり方に照らして、とても男系男子が
伝統だとは言えない。
なぜなら日本で最初に祭祀王として君臨したのは
女王・卑弥呼だからだ。
それを継いだのは、これまた女性の壱与だ。
ローマ教皇とは違うのだよ。
何が日本の本来的かつ伝統的な精神なのか、
葛城氏はちょっとでも考えたことがあるのか?

ことほどさように、彼女のスピーチの一端だけ見ても、
その無知蒙昧ぶりが甚だしい。

産経新聞の報道によると、日本政府は
「皇室制度は歴史や伝統を背景に、
国民の支持を得て今日に至っている」
と強調したという。
微妙に言葉をすり替えており、これだってきわめて欺瞞的。
天皇や皇室を戴く制度は確かに国民の支持を得ているが、
「男系男子に限定した皇位継承制度」が国民の支持を
得ているわけではない。
共同通信の全国世論調査では、女性天皇容認は9割、
女系天皇容認も8割。
多くの国民が「なんちゃって伝統」の男系男子より、
性別問わず皇位が続くことを願っているのだ。


葛城氏、「世界にはさまざまな民族や信仰があり、
それぞれ尊重されるべきだ。内政干渉すべきではない」
とも言っている。ならばこの内からの国民の声をどう聞く?
性別にこだわって亡国の道を選ぶ者か、
性別にこだわらず国体を守ろうとする者、
一体どちらが愛国者なんだろうね?
また男系男子継承のために、旧宮家という「一般国民」を
皇室に引っ張り出したって、今度は日本の立憲主義を脅かすだけだ。
内政干渉すべきでないと言いながら、押し通したいのは
自分が妄信する亡国への道なのだから、
まともな人間にとっては何の説得力もない。


時代がかった言説を振りかざすことが保守なのではない。
そんなもの、ただの自己満足でしかない。
論壇ホステスはみっともないからやめなさい。
そして安定的な皇位継承のために何をすべきか、
少しは”自分の”脳みそ使って考えろ。

笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

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