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高森明勅
2024.7.10 08:28皇統問題

もし「万世一系」を維持したいのであれば選ぶべき道は1つ

 

「万世一系」とは何か。
皇位が、「皇統」によって、過去·現在·未来に亘り、
揺るぎなく継承されるべきである、
との(事実を踏まえた)規範だろう。

そこで問われるべきは、皇統の概念だ。

しかし、これもシンプルに「天皇のご血統」と定義できる。
それが男系に限定されないことは、(伊藤博文名義の
『義解』説はともあれ)憲法及び皇室典範の
条文からも明らかだろう。

帝国憲法では「万世一系」(第1条)と「皇男子孫」(第2条)
を別に規定する。
明治の皇室典範も「祖宗の皇統“にして”男系」(第1条)と、
それらを別に規定した(例えば佐藤丑次郎
『逐条帝国憲法講義』昭和17年刊に、
「皇統に属するも❲皇統に属していながら❳
女系に出づる者」は“当時の制度において
”皇位継承資格を認めなかったことを記すが、
これは“事実として”女系も「皇統に属する」
ことが前提になっている)。

現在の憲法では単に「世襲」(第2条)とだけ規定し、
これは天皇のご血統=皇統による皇位継承を意味する。
その皇統には男系·女系の双方が包含される
というのが政府見解であり、学界の通説でもある。

皇室典範でも「皇統“に属する”男系」(第1条)とあり、
皇統は明らかに男系·女系より“上位”の概念とされている。
ところが側室不在の「一夫一婦制」で、
しかも「少子化」が進む条件下にあって、
皇位継承資格を皇統に属する“男系の男子”に
狭く限定してしまうと、どうなるか。

当然ながら皇位の継承は早晩、行き詰まる他なくなる。
それを避ける為には2つの選択肢しかないはずだ。

その1つは、「皇統に属する」女子·女系にも
皇位継承資格を広げる。
皇統に属している以上、旧時代的な男尊女卑の
観念以外に、それらを除外すべき客観的な
根拠はそもそも存在しない。

もう1つは、皇統の概念から「現に皇族であられること」
という大切な限定を外して、“果てしなく”拡大する。
その上で、“国民の中”に多く実在する歴史上の
源氏や平家、或いは皇別摂家など前近代の皇統に繋がる
系統や、いわゆる旧宮家系の子孫など、拡大された
意味(!)での皇統に属する男系男子を、皇位の継承が
行き詰まるたびに、次から次へと皇族として迎え入れて、
とにかく目先の継承だけを繋いで行く“綱渡り”の
ようなやり方だ。

前者は、男系·女系、男子·女子に拘らず、
皇室の尊厳、「聖域」性を守り、皇統の“純粋性”を
重んじて、皇室と国民を厳格に区別する立場だ。

後者は、皇室と国民の区別や皇室の聖域性などには
頓着せず、又、本人の資質や成育環境などにも
目を向けないで、国民と苦楽を共にして下さる
皇室の真の伝統への敬意を持たず、
ひたすら男系男子という血筋だけに拘る方向性だ。

しかし後者は、皇位が厳格な意味での皇統ではなく、
果てしなく拡大された意味での
皇統=“国民の血筋”によって継承される道を開く。

分かりやすく歴史上の人物で説明すれば、
平清盛や源頼朝など“広い意味での”皇統に属しながら、
もはやとっくに皇族“ではない”男系子孫の男子が、
天皇として即位する場面を想像すればよい。

まさに皇統を断絶させ、“国民出身”の
新しい王朝への交替を意味する。
それは万世一系に終止符を打つ以外の何ものでもない。
従って、本気で「万世一系」を願うなら
選ぶべき方途は1つだけ、という結論になる。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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