私の手元に天皇陛下のご著書
『テムズとともに 英国の二年間』が2冊ある。1冊は、平成5年に学習院教養新書として刊行されたもので、
「創立125周年記念」という文字も印刷されている。
発行元は学習院総務部広報課。もう1冊は、前者の新装復刊で、令和5年に
紀伊國屋書店から刊行された。
「学習院創立150周年記念」と印刷されている。
著者名はどちらも「徳仁親王」となっている。天皇陛下は後者に「復刊に寄せて」という
ご文章を追加しておられ、その中に次の1節があった。「遠くない将来、同じオックスフォード大学で学んだ
雅子とともに、イギリスの地を再び訪れることが
できることを願っている」と。その天皇陛下の願いがこの度、国賓としての
ご訪問という形で実現した。
陛下のお喜びはいかばかりか。しかし一方、陛下は本文の中で、留学が間もなく終わら
ろうとしていた日々の感慨を、以下のように率直に記しておられた。「日々の生活の中でも、ホールや
MCR(ミドル·コモン·ルーム=大学院生の自治会)での
仲間との会話にしても、このようなことが
あと何回できるか少しずつ考えるようになっていた。
日々繰り返すたとえどんな小さなことでも、
その一つ一つがひじょうに大切なもののように思えてきた。
それと同時に、私はオックスフォードで歩き慣れた道や
私の好きなスポットを、もう一度確認し、写真を撮りながら
歩いてみた。どんな小さな通りにも、広場にも、私の2年間の思い出は
ぎっしりと詰まっているように思われた。
再びオックスフォードを訪れる時は、今のように
自由な一学生としてこの町を見て回ることはできないであろう。
おそらく町そのものは今後も変わらないが、
変わるのは自分の立場であろうなどと考えると、
妙な焦燥感におそわれ、いっそこのまま時間が
止まってくれたらなどと考えてしまう」…
なお、6月19日に行われた英国ご訪問に際しての
記者会見での天皇陛下のご発言は、宮内庁のホームページに
掲げられているので、皇室に心を寄せる国民ならば
見逃すべきではあるまい。追記
○『テムズとともに』については以前、
プレジデントオンライン「高森明勅の皇室ウォッチ」
令和5年4月26日公開「『このまま時間が止まってくれたら』
天皇陛下が英国留学記に綴った『最も楽しかった』日々」
で取り上げた。▼記事URL
https://president.jp/articles/-/68853?page=1○6月25日発売の「女性自身」にコメントが掲載される。
【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/
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