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高森明勅
2024.6.24 10:17皇室

天皇陛下「いっそこのまま時間が止まってくれたら」

私の手元に天皇陛下のご著書
『テムズとともに 英国の二年間』が2冊ある。

1冊は、平成5年に学習院教養新書として刊行されたもので、
「創立125周年記念」という文字も印刷されている。
発行元は学習院総務部広報課。

もう1冊は、前者の新装復刊で、令和5年に
紀伊國屋書店から刊行された。
「学習院創立150周年記念」と印刷されている。
著者名はどちらも「徳仁親王」となっている。

天皇陛下は後者に「復刊に寄せて」という
ご文章を追加しておられ、その中に次の1節があった。

「遠くない将来、同じオックスフォード大学で学んだ
雅子とともに、イギリスの地を再び訪れることが
できることを願っている」と。

その天皇陛下の願いがこの度、国賓としての
ご訪問という形で実現した。
陛下のお喜びはいかばかりか。

しかし一方、陛下は本文の中で、留学が間もなく終わら
ろうとしていた日々の感慨を、以下のように率直に記しておられた。

「日々の生活の中でも、ホールや
MCR(ミドル·コモン·ルーム=大学院生の自治会)での
仲間との会話にしても、このようなことが
あと何回できるか少しずつ考えるようになっていた。
日々繰り返すたとえどんな小さなことでも、
その一つ一つがひじょうに大切なもののように思えてきた。
それと同時に、私はオックスフォードで歩き慣れた道や
私の好きなスポットを、もう一度確認し、写真を撮りながら
歩いてみた。

どんな小さな通りにも、広場にも、私の2年間の思い出は
ぎっしりと詰まっているように思われた。
再びオックスフォードを訪れる時は、今のように
自由な一学生としてこの町を見て回ることはできないであろう。
おそらく町そのものは今後も変わらないが、
変わるのは自分の立場であろうなどと考えると、
妙な焦燥感におそわれ、いっそこのまま時間が
止まってくれたらなどと考えてしまう」

… 

なお、6月19日に行われた英国ご訪問に際しての
記者会見での天皇陛下のご発言は、宮内庁のホームページに
掲げられているので、皇室に心を寄せる国民ならば
見逃すべきではあるまい。

追記

○『テムズとともに』については以前、
プレジデントオンライン「高森明勅の皇室ウォッチ」
令和5年4月26日公開
「『このまま時間が止まってくれたら』
天皇陛下が英国留学記に綴った『最も楽しかった』日々」
で取り上げた。

▼記事URL
https://president.jp/articles/-/68853?page=1

○6月25日発売の「女性自身」にコメントが掲載される。


【高森明勅公式サイト】

https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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