本日の執筆者は、しろくまさんです!
今回は国によって文化に対する意識の違いと、文化財返還問題について取り上げます。
以前、美術館ボランティアから聞いた話で衝撃を受けたことがありました。
その人から色んな外国の美術館や博物館に訪れた時の感想など聞かせてもらった中で、衝撃を受けたのがアフリカ北部の「チュニジア」という国の博物館に訪れた時のことです。
ヨーロッパに近い場所です↓
そこへ行った感想が、
「博物館にある物が全部レプリカだった。」
「ぜんぶレプリカ!?」
アフリカ民族の物が全てレプリカだったそうです。どうして全部レプリカなのか聞いてみると、遡ればヨーロッパ侵攻からフランスのナポレオンに獲られて、それからドイツ・ナチスに獲られ、今はドイツの博物館にアフリカ民族の物がそこに沢山あるようです。
全部レプリカ、そんな事があるなんて聞いた時はショックでした。
美術品、文化財はその国にとって文化、歴史的財産です。ドイツに限らず、ルーブル美術館、大英博物館、アメリカのメトロポリタン美術館も一部には略奪した美術品は元々の所有者に返還されず展示されています。
元の所有者に返還するものだと思いますが、盗品、略奪した美術品の返還を義務付ける国際法は確立されていません。
『1972年4月に発効した文化財不法輸出入等禁止条約(文化財の不法な輸入、輸出及び所有権移転を禁止し及び防止する手段に関する条約、ユネスコ条約)は、文化財の不法な搬出を禁ずる国際的条約であり、1970年以降に他の締約国で盗まれた文化財の輸入の禁止、返還・回復、文化財の輸出規制などを定めている。条約以前に取得された文化財は返還義務の対象外となっている。』(Wikipediaより一部抜粋)
その後さらに、
『1998年、米国のワシントンDCで実施されたワシントン会議だ。 世界44カ国が参加し、ナチス略奪品を元の所有者に戻すために各国が法整備や略奪品の探索の支援などを奨励する「ワシントン原則」で合意した。44カ国に日本は入っていない。』
(日本経済新聞より一部抜粋)
なぜか日本は入っていない事とドイツだけが返還するという限定したもの、いまだに日本とドイツ共に敗戦国の立場が透けて見えて、なぜかアメリカ主導の「ワシントン原則」という法律も公平性が欠けていてどうも腑に落ちません。
冒頭のチュニジアの博物館の例を見て、自国の文化的遺産が略奪され全て「レプリカ」という代品で飾ってある光景は、形だけで中身が空っぽという本物ではなく偽物と同じで虚しさ、喪失感が計り知れないです。
レプリカだと聞いた時、自国の文化がどれほど大事か、無くなった後では遅い。未だに文化財返還問題は解決されず簡単には返ってこない。文化の喪失は歴史の喪失と同じで残酷極まりないです。その国の歴史を証明する文化的財産は大事なもので守られるべきです。
次回は、明治、大正時代にヨーロッパの美術品に対する日本とアメリカの認識の相違について書いていきます。
「博物館にある物が全部レプリカ」という国があるというのは実に衝撃的に感じますが、それでは日本においては文化財の喪失に対する危機感やその対策はきちんとあるのでしょうか?
そのあたりの事情が次回は語られることになるでしょう。
あんまりいい予感はしませんが…