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高森明勅
2024.1.19 11:40皇室

1月7日、昭和天皇祭の当日、武蔵陵墓地で思いがけない出来事

1月7日、昭和天皇崩御相当日。
皇居·宮中三殿の皇霊殿で昭和天皇祭が執り行われた。

この祭典は大祭なので、天皇陛下が御告文(おつげぶみ)を
読み上げられる。
三殿の外の幄舎には一般の皇族方も参列される。

更に東京·八王子市の武蔵陵墓地(むさしりょうぼち)にある
昭和天皇の御陵、武蔵野陵(むさしののみささぎ)でも
祭典が行われた。
こちらには、皇族方を代表して秋篠宮家のご次女、
佳子内親王殿下がお出ましになった。

同日、私も久しぶりにJR中央線で高尾駅に向かった。
駅にはほぼ正午頃に着いた。
そこから徒歩で武蔵陵墓地へ。
空は晴れわたり、気温も暖かい。
気持ちの良い空気が流れている。

まず、奥側に位置する大正天皇の御陵、多摩陵(たまのみささぎ)、
次に貞明皇后の御陵、多摩東陵(たまのひがしのみささぎ)の
順番に拝礼。

それから武蔵野陵の向かうと、これ以前に行われた
昭和天皇祭の為の幔幕(まんまく)がそのまま張られている。
拝礼する為に近づこうとすると、宮内庁の職員に武蔵野東陵
(香淳皇后の御陵)の前の鳥居の脇に移動して、
しばらく待機するように指示された。
普通にはないことだ。

見ると既に100人ほどの参拝者が待機している。
待機者はその後も続々と増える。
どうやら、どなたか皇族の拝礼があるらしい。

我々は、皇室の為の陵墓地に、国民へのご配慮によって、
立ち入りを許して戴いている。
だから、万が一にも皇室の方々のご拝礼に邪魔に
なるようなことがあってはならないのは、勿論だ。

高円宮妃久子殿下とご長女の承子(つぐこ)女王殿下の
お出ましだった。まず武蔵野陵、次に武蔵野東陵の順番で
拝礼をされる。

お帰りの際、既に300人ほどに増えた待機者は皆、
頭を下げてお送りする…はずだった。
だが、思いもかけないことが起こった。

妃殿下と女王殿下がわざわざ我々の方に近寄られて、
お声をかけて下さったのだ。

近くで誘導していた職員は少し意外そうだった。
しかし私には、ごく自然な流れに見えた。
一瞬にして、何とも言えない温かく柔らかな空気に、包まれる。
一同の驚きと感激の中、両殿下は近くに停まっていたお車に乗って、
お帰りになった。

待機者は皆、誰に指図された訳でもなく、
自然に頭を下げてお見送り申し上げた。
宮中三殿での昭和天皇祭に参列された後、
こちらに回られたのだろう。

僅かな時間の出来事ながら、皇族こそが
お持ちの優しく気品溢れる
オーラに触れることができた。
その場にいあわせた誰もが少し幸せな気分を共有した。
その後、銘々、御陵にお参りする。

この日、私が久しぶりの御陵参拝を思い立ったのは、
今年、皇位継承問題が正念場を迎えることから、
自らの心を少しでも
引き締めようと考えたからに他ならない。
得難いハプニングによって、より印象深い体験になった。
皇位継承問題の一先ずの決着に向けて、
事態は既に動き始めている。

この機会を逃すと、次はいつこのような場面に出会えるか、分からない。

小泉純一郎内閣以来、ほぼ20年ぶりの重大局面だろう。
ここで力を尽くさなければ必ず後悔する。
今回の決着が100点満点でなくても、それを少しでもまともな形に近付け、
真の解決への足掛かりを残せるよう、奮起したい。

追記
○今回のプレジデントオンライン「高森明勅の皇室ウォッチ」
は1月26日に公開される。

○その他、
『FACTA』1月号、『女性自身』1月16·23日号、
同1月30日号にコメントが掲載された。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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