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笹幸恵
2023.12.26 15:48皇統問題

Nikkei Views、井上亮氏の記事。

上皇さまが卒寿を迎えられる前日、Nikkei Viewsで
「象徴天皇が傷つけられていく 上皇さま卒寿の折に」
という記事が配信された。
筆者は編集委員の井上亮氏。

会員限定記事(なんでこういう記事を
会員限定にしてしまうのだろう)なのだが、
上皇さまの象徴としての活動を振り返るとともに、
過去と現在のバッシングの違いを明らかにし、
さらに皇統問題にまで言及した良記事だ。

「言葉による暴力に等しい、度が過ぎた個人攻撃は
皇室の担い手の枯渇を招き、象徴天皇制の土台を切り崩す」

(担い手不足は)喫緊の課題といわれて二十数年間、
議論が進まず時間を空費」してきた。

平成3年有識者会議の旧宮家養子案についても触れ、
次のように断じている。

「皇室に関する実務を担い、皇位継承と皇族数の減少の問題を
肌で感じてきた宮内庁幹部、同庁関係者に、
旧皇族の復帰が現実的と見る意見はほとんどない」

「『さかのぼれば血統はつながっている』というのは、
現代人にとっては観念に等しく、
大多数の国民感情はどうなのか。
近代以降、国民と喜びも悲しみも共にしてきた
現天皇家への親しみがあまりに軽視されていないか」

その通りだ。
この方、ねっとりしがちな情感を
非常に抑制的に書いてくれている。

その上で、2017年の国会の議論で
象徴天皇の役割について問われた当時の安倍首相が
明確な返答ができなかったことに言及、
その後の首相や政府与党からも「象徴とは」の理念が
聞こえてこないことを指摘。

「平成の30年間、真心を込めて国と国民のため献身した営為
(筆者の主観的表現だが)について、為政者が深く考察せず、
紋切り型の表層的な天皇観で制度を見ているとしたら、
これほど傷つくことはないだろう。
それはネットでの誹謗中傷の比ではない」

政治家のみならず、知識人だの言論人だのという人だって
紋切り型の表層的な天皇観の持ち主は少なくない。
まことに薄っぺら、偉ぶりたいだけだから。
こういう人に「象徴とは」と尋ねたら、
安倍元首相に限らず、まともな返答ないんじゃないか?

どういう規定で会員限定になっているのか
わからないのだけど、こういう記事こそ
広く国民に読まれてほしい。
笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

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