70歳過ぎて一つ、とても楽になったことがあった。
男に嫉妬されなくなったことだ。
人生の成功の階段を駆け上っているときは、足を
ひっぱろうという意欲が湧くだろうが、もう70歳
過ぎても挫折の気配もなく、さらに野心を逞しく
しているとなれば、敗者は諦めるしかない。
さらに、一人で多くの女にモテているというのが、
男の本能としてのライバル意識を刺激していたのかも
しれないが、70歳過ぎればさすがに性欲も衰えるし、
容貌も老いる。
若い女からは恋愛の対象にされないし、こちらも
若い女に色気を感じなくなる。
さらに嫉妬していた男たちも老いてしまい、女に
さほどの関心は持たなくなる。
したがって、わしに嫉妬する動機がなくなってきた
ことにようやく気付いたのだろう。
嫉妬されるから言わなかったこと、嫉妬されるから
描かなかったことも、これからは表現できるように
なるだろう。
しかし、自分の人生は凶悪犯罪の犠牲にならなければ、
あくまでも「自己責任」であり、他人に自分の人生を
左右されたと思い込むのは、卑怯者の錯覚である。