自民党の総裁直属機関「安定的な皇位継承の確保に関する懇談会」
(麻生太郎会長)が主な検討対象にしようとしている
旧宮家養子縁組プラン。これは以前、竹田恒泰氏が麻生内閣当時、
政務担当内閣官房副長官だった故·鴻池祥肇氏を軸に立法化を
企てていたというプランが、その原型かも知れない
(竹田氏·門田隆将氏『なぜ女系天皇で日本が滅ぶのか』)。その時は、事務担当内閣官房副長官だった漆間巌氏が
上皇陛下が同プランを快く思(おぼ)し召さなかったとして、
頓挫したようだ(同書では、漆間氏の認識を否定しようとしているが、
残念ながら成功していない)。その時に同プランへの批判を予想して、
回答を準備していた(同書93ページ〜)。
面白いのでその想定問答の一部を紹介しよう。まず「(一夫一婦制のもとでは)男系男子(限定)はいずれ行き詰まる」
という批判への回答は次の通り。「行き詰まらないようにするための措置であり、
実際に将来行き詰まるかどうかは無関係。必要な法整備を進めるのみ」
不思議な文章だ。「行き詰まらないようにするための措置」なら
「実際に将来行き詰まるかどうか」こそが“焦点”のはずだ。
にもかかわらず「無関係」とは!さらに「必要な措置」と言っても「実際に将来」
「行き詰まらないようにするための」「法整備」でなければ意味はない。
にもかかわらず「行き詰まるかどうかは無関係」が前提になっている。
呆れ果てる支離滅裂ぶり。ただ1つだけ確かなのは、最も肝心な「実際に将来行き詰まるかどうか」には
無関心であり、自ら設けた想定上の批判に対して1ミリも
反論できていないということだ。次の想定上の批判は「国民の支持、理解を得られるのか」。
これへの回答は以下の通り。
「皇室典範の原則を変更しない小幅な修正案であるため、
そもそも国民の理解·支持を得る必要はない」
いやいや、これまで明文(皇室典範第9条)で禁止されていた養子縁組を、
憲法上優先的に行うべき手当て(=「男系男子」限定の見直し)も
放置して、特定の家柄·血筋つまり「門地」の国民にだけ認め、
国民の中に養子縁組の対象に“なり得る国民”と“なり得ない国民”
という分断を持ち込むプランは、とても「小幅な修正案」とは
言えない。又、たとえ実際に「小幅な修正案」だった場合でも、
天皇が憲法上「国民統合の象徴」とされている以上、
「国民の理解、支持」は不可欠だろう。ここでも1つ明らかなのは、同プランに対して提唱者本人が
「国民の理解、支持を得られる」自信を全く持っていない、ということだ。
以上の2つをまとめると、旧宮家養子縁組プランは将来に行き詰まることが
たやすく予想でき、国民の理解、支持も得にくいことを、
提唱者が自ら認めていたことになる。そのようなプランを自民党の上記懇談会で
まともに扱うつもりなのだろうか。【高森明勅公式サイト】
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