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2023.12.5 07:00ゴー宣道場

関西門下生の現場から(ケアマネ編➂)

門下生ジャーナリストで、ケアマネージャーの だふね です。
先週に引き続き、私が行っている「介護保険の認定調査」業務についてお話します。

 

調査にあたり、対象者の日常生活における困り事が「どのような病気や怪我に起因しているか」を知ることは重要です。
私はあらかじめ対象者の情報に目を通しますが、そこには外科的あるいは内科的な疾患の他、現在の状態などが記されています。(市町村によって申請時の書類、連絡事項の記入方法の様式は異なります。そのため、対象者についてほとんど何も知らされないまま調査員が臨むところもあります。)

認知症だと、「認知症」とだけ書かれているときもあれば、「アルツハイマー型認知症」や「脳血管性認知症」などの診断名で書かれているときもあります。
診断が出ていない段階でも、認知症が疑わしかったり、それによって周囲が困っていたりするなら(排泄の失敗が目立つ、同じ話を続けて何回もしてくるなど)、より具体的に記されているほうが、私としては聴き取る際の心構えができるので、ありがたいです。

但し、調査にあたっては「認知症だからこうなんだ」や「何も書かれてなければ問題ないのでは」といった先入観を持たないことが前提。このことは、知識や心構えとは別です。
誰も彼もがパターンにはまった言動をとるわけではない。当たり前ですが対象者は一人一人まったく違う人間であり、言動には生活歴、性格、趣味嗜好、主義、思想も大きく影響します。病人であってもなくても。
よく「病気を診るな、人を診ろ」『Dr.コトー』にもあったかな?と言われますが、それと似たようなものかと考えます。
しかし、いざ話に耳を傾けてみると、一見どこにでもいそうな人がたくさんの問題を抱えている場合もある。自立が困難になった対象者は、おそらく内面にさまざまな気持ちが渦巻いており、若輩者の私、実は怯んでしまうこともしばしばです。(そこを奮い立たせてナンボの仕事なのですが。)

また、認知症だからとて、「記憶障害」や「ひどい物忘れここでは周囲が対応に追われるレベルを指して言う」がすぐに出るとも限りません。
記憶力が比較的保たれていて、しっかりしているように見える人で、「専門医にかかったことがない」「人に相談したこともない」というケースもあります。しかし、例えば対象者が暴言・暴力をふるうことで、家族が心身ともに疲弊し、危機に晒されているとすればどうか。
暴力などに限らず、お互いが「そういうものだ、別におかしくない」と思い込んで放置している。渦中にいると気づきにくい。第三者がよくよく話を聴くことで判明する――。
本人や家族が自覚を持たないまま、そのような深刻な状況が潜んでいることも、往々にしてあるのです。

介護認定において、「認知症の診断の有無」は問いません。調査員は対象者の「認知症による行動障害の有無、頻度」の聴き取りは行いますが、あくまで福祉職の立場で、対象者を患者ではなく生活者として捉え、実態を客観的に把握すべく努めることがメインです。

疑わしい症状でも、認知症ではなく一時的なストレス、うつ病や妄想性障害などの精神疾患からくることもあります。その場合、適切な治療や指導を受ければ安定することも多いので、まずは専門医に診てもらうことをお勧めしたいです。
私はどの人にも、医療や福祉などの領域に拘らず、困ったときのための身近な相談場所を持っていただきたいと願います。最初の一歩を踏み出すまでが、いろいろと悩ましいでしょうが。

実際、私は調査を終えた後、対象者かあるいは立会者(主に家族)から「たくさん話を聴いてくれてありがとう」という言葉を、よくいただきます。

私にとって、自分で見て聴いて作成した報告書は、いわば「公」へのメッセージです。たとえ力としては小さくても、対象者の現状が良い方向に進むことを、毎回祈っています。(これ、偽善でなく本気ですからね(^^;)

さて、介護についての連載も3回目になりました。私自身もまだまだ未熟で、勉強中の身。自分の現場について知り得たことをまとめる作業はむずかしいけれど、今後もできるかぎり続けていきます。
ブログ閲覧者の中には、今まさに介護問題に突き当たっている方々もおられるかと。私の記事が少しでも、皆さまのお役に立てるのであれば幸いです。

 


【だふね プロフィール】
昭和48年大阪生まれ。奈良市在住。主婦にして一男二女の母。ケアマネージャー。性格は‟慎重な行動派”‟陽気なペシミスト”(友人評)。趣味は映画鑑賞。コロナ禍が始まると同時に「関西ゴー宣道場設営隊(現・公論サポーター関西支部)」隊長就任。以後、現場を持ちながら公論イベントの盛り上げにも尽力。公私ともに濃密な日々を過ごしている。

 


 

【トッキーコメント】
何事においても、人にものを相談する時というのは、その第一歩を踏み出すのが大変なもの。
ましてや、身内について、排泄の失敗が多いとか、物忘れがひどいとかいう話を、見ず知らずの人に相談するには、相当躊躇するはず。
そして、その間に事態が悪化してしまうということも常に起きているはずです。
そのようなことが少しでも減るように、このブログが少しでも役立つことを願います。

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