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笹幸恵
2023.11.28 09:03日々の出来事

女性崇拝が日本人の自然なあり方?

一泊二日で八ヶ岳山麓の縄文遺跡めぐりをしてきた。
尖石縄文考古館、中ッ原遺跡、井戸尻考古館、北杜市考古資料館、
釈迦堂遺跡博物館と、考古学ギョーカイでは有名な遺跡と資料館。

まずは見て!
このぷりっぷりのお尻。
尖石(とがりいし)に鎮座しています。


国宝「土偶」(縄文のビーナス)です。
やっと会えた!


ふくよかな曲線が美しい。

同じく尖石には、もう一つ国宝が。


国宝「土偶」(仮面の女神)

顔ががっつり三角で、ちょっといかつい感じ。
よく土偶は女性を象ったといわれているけど、
これ女性か・・・?

と思ったら、間違いなく女性だった!
なぜなら女性器がご丁寧に象られているから。

ううむ、現代人の価値観からすると
モザイクかけても良さそうなものだけど、
純粋に命を宿すという神秘を考えたら
これこそが祈りや信仰の対象なのかもしれない。

さらに驚いたのは北杜市にあったこちらの土器。

分類としては顔面把手付深鉢(がんめんとってつきふかばち)。
把手の部分に人の顔。で、土器の中央にも人の顔。
こちらは土器全体を女性の体に見立て、
出産のシーンを文様で表現した出産文土器といわれている。
こうした物語を文様で表した土器があることを初めて知った。
意匠は異なれど、今回はこの出産文土器をたくさん見た。

ちなみに釈迦堂では土偶の顔、顔、顔・・・。

表情豊かで愛らしい。
重要文化財があり過ぎてお腹いっぱい。


ところで土偶も女性、土器も女性。
縄文人が残したものは女性のモチーフばかり。
いくら命を宿すのが女性だとはいえ、
男性をないがしろにしすぎでは?
と、その女尊男卑っぷりがやや心配になる。

が、ちゃんとあった!
男性を象ったものが。

それがこちら。

これは「石棒」と呼ばれていて、
縄文人の精神世界を知る手がかりの一つといわれてる。


しかし、なんと直裁的な・・・。


「考古学ってちょっと楽しそうだよね」という知識しかない友人が、
ぼそっと言った。

「なんか、、、女性は土偶とか土器のモチーフになっているのに、
男性を象ったものがコレだけって・・・。しかも身も蓋もない感じで・・・」


そうなのだ。
命を宿す営みは男と女がいなければならないけど、
縄文人は明らかに女性の神秘を称えている。
子を宿し、産む性である女性が祭祀や信仰の対象となっている。
人智を超えたものへの畏怖だろうか。
これって穢れとか男尊女卑とか、ヘンなイデオロギーが
入ってくる前の自然な物事の捉え方だったのではないか。
そしてこの先、弥生時代になると卑弥呼が登場する。
神話では天照大神が皇祖神として今に語り継がれる。

女性崇拝こそが日本の自然なあり方、
根本的な原理だったのではないかと
あらためて実感した次第。

笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

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