作家の村上春樹氏が、自身のラジオ番組でジャニーズ問題に言及というニュースがありました。
元のラジオ番組は聞けていないので、記事中の記載のみを見た上での感想になりますが、「時代を代表する作家の発言」であり、後に「歴史」が語られる際に引用される可能性も大きいため、思った事を記しておきます。
村上氏は、ベトナム戦争時の米議会のエピソードなどを挙げながら
「しっかり声を上げる、空気なんて読まない、忖度もしない。そういう人たちの存在が、たとえ少数ではあっても僕らの社会には必要」
と述べたとの事です。
この言葉を単体で読んだら「まことにその通り」と感じます。しかし、記事を読む限りはこれが「当事者」を称えた発言だと思われ、途端に「????」となってしまいます。
むしろ、事実関係の検証やあらゆる筋道を全部飛ばして、「〝空気への忖度〟のみで物事が暴力的に進行している」のがジャニーズに対するキャンセルの現状です。
氏の言う「声を上げる」は、当然その前に「権力に対して」という句が付くのでしょう。では、いま最も力を持っている「権力」とは何なのか?
少なくとも「芸能界に君臨するジャニーズ事務所の権力」など指先だけで消し飛ばしてしまえる程、「人権真理教の絶対正義」は大きな権力を持っている事が明確になりました。
現在は、事実に基づいた疑問を持つ事すら憚られる空気の中で、「権力に都合の良い歴史」が作られようとしています。当代きっての文学者が(おそらく発言の意図とは180°逆の)自身の言葉で権力の横暴を後押ししたとなれば、取り返しの付かない汚点となるでしょう。
「しっかり声を上げる、空気なんて読まない、忖度もしない。そういう人たちの存在が、たとえ少数ではあっても僕らの社会には必要」
同感です。ただし「何に向けて声を上げるのか」その方向を見極めないと、むしろ空気への忖度そのものと同じ(むしろ、よりたちの悪い)結果に結びつきかねません。
体感では、一時期よりも「本当に警戒すべき〝権力〟は何か?」という事への深い考察が、世の中から漸減しているようで、恐怖に近い危惧を抱いています。