弁護士のゴー(茅根豪)です。
普段、私は職業柄、いろいろな立場の人とお話をする機会があります。その中で、何百回も耳にし、聞く度に軽く正したり、あるいは問題がなさそうならスルーしちゃったりする、そんな用語か幾つかあります。
その代表が「キャンセル」です。
先日(11月12日)開催された東北ゴー宣言道場でも、「マスコミはなぜ常に狂うのか?」と題して、ジャニーズ問題などが議論されましたよね。
当日の議論の中では、ジャニーズ側の責任を追及するマスコミの論調・態度が、アメリカ輸入の「キャンセルカルチャー」の振る舞いに堕していると強く批判されたわけです(法を無視したリンチだろ!)。
「キャンセルカルチャー」については、小林先生がゴーマニズム宣言や当日の議論を通じて何度も説明しているので、参加者や視聴者に誤解があるはずがありません。
でも日常生活では、皆さん「キャンセル」という用語をどのような意味で使ってますか?
おそらく、「取り消す」、「注文を取りやめる」くらいの意味で使ってると思います。
例えば、、、
コンビニに入って、スポーツドリンクを買ってお金も払ったけど、直ぐに気が変わって、店員さんに「すみません。これキャンセルして、こっちのウーロン茶にしてもらえませんか」と言う感じで使うと思います。
このような場合、今時ほとんど当然のようにウーロン茶に交換してもらえると思いますが、でもこれは、法的にはちっとも当然ではありません。
法的には、スポーツドリンクの売買契約は有効に成立し、その履行(商品引き渡し/代金支払い)まで完了しています。それなのに売買契約を解除して、全く別の契約であるウーロン茶の売買契約をあらためて締結しちゃったわけです。
「キャンセルして、こっちが欲しい!」的に使用し、確かにほとんど通るので明確に法律を意識しないで済みますが、法的な解除の理由(不良品だった等)がないのに、本来は当然に解除できるわけではないのです。
なぜ契約が(さも当然のように)解除できて、別の契約を結び直せちゃうかというと、お店側が「任意解除」に応じてくれているからに過ぎません(双方が任意に合意するから解除できただけです)。
契約の解除は、任意解除と法的解除に大別できるのですが、上記ウーロン茶の場合は、お店が顧客サービスの一環として前者に応じてくれてるだけなのです。
日常的な小さい取引であれば、誰も法律なんて意識せず、当該具体的場合における社会常識的なバランス感覚で処理されて、その処理結果に特に異論がない状態が多いということです(←保守思想の実践!?)。
そのバランス感覚が(どちらかが狂って)食い違ったり、法的解除に拘った場合は、ぜんぜん別な話になってしまします。その例はまた近いうちにブログで書かせいただきますね。
当たり前のことを偉そうに述べちゃいましたが、「キャンセル」という言葉は私も便利で使ってしまいます(笑)。まあ、かなり気をつけて使いますが。
ただ、ECサイトを運営したり、接客業務がある顧問先に対しては「解除、取り消し、返品、中止など、日本語で意味をハッキリしないと後々トラブります」と助言することは多いです(←やはり偉そう)。
しかし、あれですね、頻繁に目にする用語でも、日常用語としての意味、法的な意味、社会評論としての意味などなど、いろいろな意味がバラバラに混じり過ぎて使いにくい用語がたくさんありますよね(特にカタカナ!)。
私としては、弁護士なのに、ハラスメント、コンプライアンス、ポリティカルコレクトネス、リベラル、人権とかがよく分かりません(-_-;)
さらに、最近は、旧宮家、旧皇族、皇統、男系などなど、使用する人の立場によって恣意が露骨すぎて、思考や議論を阻害している例が多いと感じています。少なくとも自分は、そのような用語で何かを説明した雰囲気の文章にならないよう気をつけたいと思います。