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高森明勅
2023.10.16 09:00皇統問題

皇太子と傍系の皇嗣の違いを簡単に整理する

令和の皇室には今のところ「皇太子(直系の皇嗣)」が
ご不在のままだ。

勿論、傍系の「皇嗣」ならおられる。
秋篠宮殿下が現在、皇嗣でいらっしゃる。

しかし、皇太子と傍系の皇嗣を“全く同一”と見ることはできない。

勿論、共通点もある。それはどちらも皇位継承順位が
“第1位”であられること。これは見逃せない。

しかし、皇太子が次代の天皇に即位されることが
確定したお立場なのに対して、傍系の皇嗣の場合は、あくまでも
“その時点で”皇位継承順位が第1位であられるにとどまる。
皇太子と傍系の皇嗣の根本的な違いはこの一点だろう。
畏れ多いが、秋篠宮殿下の場合も同じだ。

内閣の意思によって「立皇嗣の礼」という前代未聞の
儀式が執り行われても、お立場自体に変更はない。
これについて、無知か、思い込みか、間違って理解する向きが
少なくないようだ。

秋篠宮殿下は、ご年齢が天皇陛下より僅か5歳お若いだけ。
なので、陛下がご高齢を理由に退位される時には、
秋篠宮殿下も既にご高齢になっておられる。
従って、それから即位されるという展開は、現実には予想しにくい。

皇室典範でも、皇太子(及び皇太孫)と傍系の皇嗣の間に、
明確な区別を設けている。
最も重大な違いは、次の通り。

皇太子の場合、当然ながら「皇籍離脱」の仕組みが一切適用されない。
これに対して、傍系の皇嗣はその適用の可能性が全面的には
排除されていない(第11条)。これは極めて大きな違いだ。

次に、摂政に就任した皇族は、摂政そのものが廃止されない限り、
たとえ傍系の皇嗣が成年に達したり、故障が無くなっても、
摂政の任を譲らない。
但し、唯一の例外として、相手が皇太子(又は皇太孫)の場合だけは、
その任を譲らなければならない(第19条)。
傍系の皇嗣に対する皇太子の優越は明らかだ。

皇太子と傍系の皇嗣について、皇室典範がこのような
差別化を図っている為に、先の皇室典範特例法では、大急ぎで
その手当てをする必要があった(第5条)。

その他、皇太子のお住まいは「東宮御所(とうぐうごしょ)」
という天皇のお住まいに準じた呼称なのに対して、傍系の皇嗣の
お住まいは一般の皇族方と同じく「宮邸」だ。
現在、皇嗣であられる秋篠宮殿下のお住まいは、大がかりな
改修工事を終えられても、呼び方は「秋篠宮邸」のままで変更はない。

又、皇太子が外出されることを「行啓(ぎょうけい)」と申し上げる。
天皇の「行幸(ぎょうこう)」の次に敬意を込めた表現だ。

これに対して、傍系の皇嗣の場合は、一般の皇族方と同様に「お成(な)り」。 
皇太子妃も皇太子と同じ「行啓」なので、それより格下の呼び方になっている。

これらに加えて、皇居勤労奉仕団へのご会釈は、
昭和から平成にかけて天皇とは別に「皇太子」からも賜るのが通例だったが、
令和の現在、「皇嗣」であられる秋篠宮殿下は、
それをなさっておられないようだ。

これは無論、天皇陛下からのご会釈も含めて、何ら義務ではなく、
国民の側からお願いするのも全く筋違いだ。
ここでは、単にこうした事実があることを紹介するまでなので、
その点、くれぐれも誤解のないように(何でもかんでも秋篠宮家
バッシングに繋げようとする憂慮すべき傾向が一部にあるので、念の為)。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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