ゴー宣DOJO

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笹幸恵
2023.8.29 07:23皇統問題

『SPA!』倉山記事について

先日のブログ、「SPA!編集部へのお願いごと。」
で、「他の読者の見解も伺ってみたい」と書いたところ、
東海支部のL.Kさんより、倉山記事についての
ご感想が届きました。
編集部の皆様、ぜひご一読ください。

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東海支部のL.Kです。

笹先生が言及されていたSPA!倉山満のコラムを読んでみましたが、
まあいつもながら酷いですね。

「最も大事な大枠が、皇統に属しない男子(つまり民間人)を
皇室に入れたことは一度も無いことだ。」
という部分が最も言いたいことなのでしょうが、
結局、近代以前までは女性も同じなんでしょ、と。
男性も女性も、皇族と同等以上の待遇を受けることはあっても、
皇族として組み入れられはしなかったんでしょ、と。

倉山が示している諸々の事例を総合すれば、
そうとしかいえないはずなのですが、

●女性に関しては「皇族になった事実は無いけど
皇族のような待遇は受けてきた」と言い、
男性に関しては「皇族のような待遇を受けてきたけど
皇族になった事実は無い」と前後を逆に説明することで、
あたかも男性だけが排除されていたかのように見せかけ、

●「皇族に准じる権威」「高貴な身分の人」「准皇族」等と、
「実質0円」みたいな言葉を濫用して
「皇族」と「皇族並みの待遇を受けた者」の境界を曖昧にし、

●合間に、「天皇と結婚すれば<<即座に>>皇族になれたか」や
「この(=天皇の妻の)全員が皇族の訳はない」といった
結婚すれば皇族になることが前提とした記述を織り交ぜることで、
近代以前にも結婚して皇族となった女性がいたかのような印象を
植え付ける

という、詭弁のお手本のような論法で読者を攪乱しています。
「准」という言葉を倉山は多用しますが、
本質を誤魔化したい詭弁家にとってはありがたい言葉ですね。


そもそも、倉山は単純に言葉遣いがおかしい。

美智子さま、紀子さまのことを皇太后陛下、東宮妃殿下と記していますが、
いうまでもなく、皇太后陛下ではなく上皇后陛下、
東宮妃殿下ではなく秋篠宮妃殿下(あるいは、秋篠宮皇嗣妃殿下)です。

また、「愛子殿下や佳子殿下は(中略)皇女だ。」と書いていますが、
皇女とは天皇の娘を指します。
従って、現在皇女と呼ばれるお立場なのは愛子さまのみです。

これらはただ誤用しているのではなく、
自説を正しいように見せかけるための印象操作であることは明白です。
紀子さまを東宮妃殿下と記すのは、
秋篠宮さまを皇太子(皇太弟)であると誤解させ、
秋篠宮さまへの継承を既成事実化させようという魂胆でしょうし、
佳子さままで「皇女」に括るのは、
直系・傍系の違いを曖昧にさせたいからでしょう。

「上皇后」という(「立皇嗣の礼」と同様に)
歴史上かつてなかった言葉を使いたくないのは、
気持ちとしては分からなくもありません。
しかし、既に正式に定められ、一般に定着している以上、
その称号でお呼びするのが
現代に生きる社会人としての常識であるし、ご本人への礼儀でしょう。
物書きとしてその分野を一般に伝える者ならば尚更です。

歴史通ぶって、意味も無く耳慣れない呼び方をするのは、
幼児じみた独りよがりなこだわりというほかありません。
見出しにもある「時代に合わせて」の意識は、
一体どこに行ったのでしょうね。
(念のため断っておきますが、政府の定義と異なる認識が
勝手に流布されている「旧皇族」とは、状況は全く異なります。)

そして、そこまで知識マウントを取っておいて、愛子さまのことは
「敬宮殿下」と御称号で記さないのも、逆に不自然さが際立ちます。
おそらく、そうお呼びしてしまうと直系と傍系の違いが
さらに鮮明になってしまうからでしょう。


ここまで恣意的な言葉の誤用や詭弁を弄するのは、
現実が倉山にとって都合が悪いからに他なりません。
秋篠宮さまが皇太子(皇太弟)の称号を辞退されたことの重みが、
倉山によって却って強調されているのは皮肉なことです。

しかし、問題はそれだけではありません。
正式な呼称も、秋篠宮さまの「秋篠宮」という名前を
大切にしたいという思いも無視して、
倉山は皇太弟だの東宮だのと祭り上げているのです。
自分が「治天の君」にでもなった気でいるのか?
とんでもない傲慢さです。
「天皇・皇族に人権は無い」と言ったり、
悠仁さまを種馬扱いしたりと、
皇室の方々の尊厳を貶める態度は目に余ります。

(倉山は、悠仁さまを種馬扱いしているという認識を動画ではっきり認め、
「(皇室とは)そういう世界なわけですからね。」と開き直っています。
下記動画の17分29秒から。
https://youtu.be/gP9fNIIN6CU?t=1049
文字起こしは下記ブログ参照(該当部分は背景黒で強調)。
https://aiko-sama.com/archives/27284

このように、論理的にも人道的にも、
良識や誠実さが致命的に欠落した倉山の文章は、信用に値しません。
皇統問題以外の主張については深く知りませんが、
率直に言って、読む気にもなりません。

言葉の乱れは、秩序の乱れにつながります。
仮にも言葉を武器とする出版社が、
こんな言葉を公に晒して平気なのか?
編集部に問いたいです。

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幼児じみた独りよがりのこだわり、
私もまさにそう思います。

倉山の記事をスラスラ読めた!
という人は未だ現れず。

笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

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