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高森明勅
2023.2.1 08:00皇統問題

「男系男子」限定ルールより側室制度の歴史の方がずっと長い!

「男系男子」限定ルールの歴史は明治以来、僅か百年余り。
明治の皇室典範に史上初の「男系男子」限定という
窮屈なルールが採用された時、それを維持する為に
“不可欠”の前提とされたのは、古代以来の側室制度だった。 

例えば、奥平康弘氏『「万世一系」の研究ー
「皇室典範的なるもの」への視座』に

「『女帝(女性天皇)の否認』と『庶系(側室から生まれた
非嫡出子・非嫡系子孫)天皇の容認』とは、ウラとオモテの
関係にあった」

「男系・男子主義を貫きながら、しかも
『皇胤(こういん=皇室の子孫)繁栄』論があり得たのは、
天皇家が嫡出子主義に固執せず、まことにおおらかに
(側室から生まれた)庶出の男子にも皇位継承可能性を
開いていた制度があったからだ」 

などの指摘がある。

しかし、それはとっくに排除された。

そもそも側室の存在は、「男系男子」限定ルールよりも
遥かに古い由来を持つ。
古事記・日本書紀が伝えるところでは、初代・神武天皇の時点で
既に正妻(記=「大后」・紀=「正妃・皇后」)以外の“妃”を
確認できる。

まさに“側室二千年の伝統”と言えるのではあるまいか。
しかし、「男系男子」ルールの絶対死守を叫び、
前例・先例、“古来の伝統”の硬直的な維持を唱える人々の中から、
“側室の伝統”復活を訴える声はほとんど聞こえて来ない。
さすがに無理だと分かるのだろう。

それなら、側室と「ウラとオモテの関係にあった」
“男系男子”限定ルールもそれに劣らず無理、と
分かりそうなものなのだが…。

追記

〇「女性セブン」2月9号(1月26日発売)に敬宮殿下の
ご文章・4編が載っている。この記事は好企画。
〇新刊の鈴木貫太郎氏『ルポ 日本の土葬』
(合同会社宗教問題)を恵送戴いた。著者及び版元に感謝。

 

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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