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高森明勅
2023.1.25 09:00皇統問題

皇位の安定継承を「全てか無か」式のバクチ思考で語るなかれ

皇位の安定継承を“絶対に”確保できる方策なんてあり得ない、
と強調する論者がいるとか。
未来永劫、皇位継承の危うさを100%排除できる
仕組みなんて無い―という意味では、
畏れ多いが不妊や不婚の可能性も排除できない以上、
その指摘自体は間違っていない。
しかし、ことさらそれを力説するのは一体、どういう意図なのか。
これについて考える為に、いくつか架空の事例を挙げてみよう。

◎良いドライバーと駄目なドライバー。
〇前提命題=安全運転をしなければ交通事故につながるが、
どんなに安全運転を心がけても“絶対に”事故に遭わないとは断定できない。
△良いドライバー
→だからこそ、より細心に安全運転を心がける。
△駄目なドライバー
→だったら、安全運転なんてしない。

◎良い受験生と駄目な受験生。
〇前提命題=受験勉強をしなければ志望校に合格できないが、
どんなに頑張って受験勉強をしても“絶対に”
合格できるとは断定できない。
△良い受験生
→だからこそ、熱心に受験勉強に打ち込む。
△駄目な受験生
→だったら、受験勉強なんてしない。

◎良い患者と駄目な患者
〇前提命題=快復の為には治療、静養が欠かせないが、
どんなに治療、静養に専念しても“絶対に”快復できるとは断定できない。
△良い患者
→だからこそ、治療、静養に最大限、努める。
△駄目な患者
→だったら、治療も静養もやらない。

◎良い皇室論と駄目な皇室論
〇前提命題=今の「男系男子」限定というルールを変更しなければ、
正妻以外の女性(側室)から生まれた非嫡出子・非嫡系子孫の
皇位継承可能性が全く除外された条件下では、皇位の継承も
皇室の存続も行き詰まるが、どんなルールでも皇位継承が
“絶対に”安定するとは断定できない。
△良い皇室論
→だからこそ、より安定性を確保できるルールに変更する。
△駄目な皇室論
→だったら、(明治の皇室典範以来の)“先例”通り
「男系男子」限定で押し通す。

上記の論者は果たしてどちらなのか。


追記
プレジデントオンライン「高森明勅の皇室ウォッチ」
令和5年最初の記事は、“少子化”と皇室の将来について取り上げた。
1月27日金曜日に公開予定。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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