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笹幸恵
2023.1.12 18:50皇統問題

屁理屈こねて論理が破綻する「倉山的手口」

『SPA!』1/17号で倉山満が皇位継承問題について
記している。
前半では、日本が守る価値として皇室を挙げ、
皇室を皇室たらしめるものとは何かについて
持論を展開している。
縷々綴ってはいるが、結局、博識自慢を
したいんだろうな、という感想しかない。

後半では、
「一度の例外が無く続いている伝統」が
皇位の男系継承だとして、
それが皇室の本質だと説いている。
そしてこう続ける。

「男系継承など、そんな言葉があったのか」
という批判もあるが、ならば「女系」などという言葉もない。
「女系天皇」「女系容認」という言葉が出て、
仮に皇室の伝統を示す言葉として
「男系」という言葉が出てきただけである。

いきなり本題に入ったかと思えば、
いきなり論点のすり替え。
「男系継承などという言葉があったか?」という問いには、
「そもそも男系継承という概念が古代からずっとあったのか?」
「伝統として男が継ぐべしという考えでずっと皇統が続いてきたのか?」
といった意味が含まれている。
倉山ほど博識を誇る人が、それを理解しないはずはない。
にもかかわらず、「男系がないなら女系だってないもん」と
だだをこねているのである。

しかも順番が逆でしょ?
男系原理主義者が「男系絶対!」と言うから、
「いやいや、女系継承だってありましたよ」という話でしょ?
しかも「女系絶対!」と言っているわけではない。
男も女もない、双系でしょ?
と言っている。性別ではないのだ。
ゆえに、男という性別を絶対条件とした「男系継承」は
本当にあったのか?という問いに倉山は真正面から
答えなければならない。

そればかりか、男系継承の意味すらもすり替えている。

「一般人の男を皇族にしないこと」

だって。
全く違う。男系継承というのは、
「女が、女という理由だけで天皇になれないこと」だ。
完全なミスリード。


しかも・・・、天皇と皇族がごっちゃになっている。
これは致命的。

皇位の男系継承とは、一般人の男性を皇族にしないことである。
歴代天皇は父親の父親・・・・・・をたどれば、必ず神武天皇に至る。
皇族は神様の子孫なのだ。

天皇と皇族は別もの。
これでは文意が通らない。
下線部が「天皇」ならばまだ意味が通るけれど。
一般男性を皇族にしないことと、
天皇を男系でたどることとは全く別の話だ。
わざとなのか? それとも無知なのか?
前半の博識自慢が泣くよ。

さらに「皇室における掟は先例だ」と
なぜか勝手にオキテを定め、
その上で一般男性が皇族になることを
「道鏡的手口」=先例を無視した単純な手口
「義満的手口」=先例を熟知して蹂躙する手口
と分析、女系論にもそれを当てはめてみせる。
が、義満的手口は具体的な記述がないまま
稿が終わっているし、
道鏡的手口も全然ピンとこない。

そもそも先例原理主義者だから、
「伝統」の捉え方も間違っている。
「先例の積み重ねが伝統である」
だって。
同じ男系継承を主張するY染色体論者を批判しているけど、
倉山だって頭を抱えるほどの頑迷固陋さだ。

摂関政治の図もあまりに杜撰。
前近代においては、女性が結婚しても
身分は非皇族のままだった。
天皇はもとより皇族ではない。
したがってこの図の「皇族」の分類には
誰一人入らないことになる。

無知なのに博識ぶりをひけらかし、
屁理屈こねて論理破綻。
これが「倉山的手口」である。
笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

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