政府が現在、国会に検討を委ねている
皇族数の確保策を巡る有識者会議報告書について、
実は同会議事務局が作成した
「事務局における制度的、歴史的観点等からの調査・研究」
というレポート(令和3年11月30日提出)の中で、
“養子縁組プラン”が抱える問題点を率直に指摘していた、
という事実がある。今回の有識者会議報告書は、事務局がそこで自ら指摘した
問題点をクリアするロジックを、遂に構築できていない。
だから、「予め結論ありき」で“出来レース”的に
提出した稚拙な作文、という印象を拭えない。
以下、同レポートから関連の部分を掻い摘んで紹介しよう。レポートでは「養子となり得る者と他の国民の間の平等感への配慮」
が必要との観点から、具体的な問題点を列挙する(32~33ページ)。
これは明らかに憲法が禁じた「門地による差別」(第14条第1項)に
配慮した内容になっている。しかし、「憲法違反」という“客観的”な判定基準を設けると、
一発アウト(!)であることが明白になるので、
ゴマカシの余地を残した「平等感」という“主観的”な
問題設定にすり替えている。これは事務局作成資料として
やむを得ない限界だろう(以下、問題点を整理して
理解しやすいように、記述の配列の前後を一部入れ換えた)。「養子縁組を恒久的に制度化し、例えば旧11宮家に限って
養子縁組となることができると規定した場合には、
旧11宮家の男系男子が他の国民と異なる立場にあるという
見方を恒久化することにつながりかねない。
これは、国民の間における平等感の観点から問題が
大きいのではないか」
(←「門地による差別」に当たる!と
全面否定しているのにかなり近い言い回し)「(上記の問題を緩和する為に―引用者)
一定の期間を限って制度化したとしても、
法律の明文で規定する以上は、養子となり得る者として
規定される国民と他の国民の間の平等感の問題は
あるのではないか」
(←期間限定という緩和策も問題解決にはならない!との指摘)「(恒久制度も期間限定策も避けて―引用者)
個別の養子縁組の機会を捉えて養子縁組を可能とする
立法を行う場合、養子縁組の成立に向けた様々な準備は、
皇室典範により養子縁組が禁止されている状況の中で
行わなければならないことになる」
(←問題回避を目指す個別対処策も現行法の“禁止”
規定との関係で問題あり!という批判)「権力分立や、国家に対する国民の自由・平等の
確保という観点から、法律は一般性(不特定多数の人に対して、
不特定多数の事案に適用されること)を有していなければ
ならないとする考え方もあり、
(平等感に配慮して予め法律を制定せず、
個別に養子縁組の合意が得られた場合ごとに、
それを合法化する“後追い”的に立法措置を講じるという
―引用者)このような個別処分的立法は難しいとの
考え方もあるのではないか」(←個別対処策への批判に追い討ち!)有識者会議報告書には、残念ながらこれらの
(事務局という立場なのでさすがに控え目な表現に抑えているが)
問題の本質に迫る指摘に対して、説得力のある釈明や
回答は一切書き込まれていない。
事務局によって事前に(!)、最終報告書に対する
事実上の“ダメ出し”が公表された、珍しいケースかも知れない
(レポートでの“先回り”的なダメ出しは、
担当官僚としてのプライドが書かせたのだろうか)。但し、有識者会議のホームページに公開されていても、
政治家や記者を含めてその中身は余り読まれていないのでは
あるまいか。
少なくともそのように高を括っているから、
あのような劣悪な報告書を平然と政府に提出し、
政府もそのまま国会に回すことができたのだろう。次の機会に改めて、憲法における第2条「皇位の世襲」規定と
第14条「門地による差別禁止」規定との関係について、
私なりの整理の仕方を述べてみたい。追記
11月29日発売の「女性自身」にコメントが掲載される。
【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/
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