『文藝春秋』12月号に掲載の岩田明子氏
「安倍晋三秘録③『愛子天皇』を認めていた」について
プレジデントオンラインの連載「高森明勅の皇室ウォッチ」
(11月16日公開)で取り上げた。
幸い好評で、多くの人に読んで貰えているようだ
(同日、Yahoo!にも配信された)。
字数の制約でそこでは触れられなかったことの一端について、
ここで述べておこう。
それは安倍晋三元首相に最も“食い込んだ”政治記者と言われた
元NHKの岩田氏だが、残念ながら皇室については詳しく正確な
知識を持ち合わせていないらしい、ということだ。
『文藝春秋』の記事にこんな一節がある。「(天皇陛下が)皇太子時代には、
ご夫妻が海外訪問をするための予算を皇族費から
捻出することが難しく…」これは安倍氏への取材に基づく記述だ。
よって、安倍氏の誤認をそのまま受け取ったのかも知れない。
しかし、岩田氏にこの方面の基礎知識がもしあれば、
「皇族費」はもっぱら内廷“外”の宮家の皇族方の品位を
保持する為に支出され、内廷皇族でいらっしゃる
「皇太子」は対象外であることに、ちゃんと気付くはずだ。天皇・皇后、皇太子・皇太子妃など内廷の方々の
日常の費用その他の為には、皇族費とは明確に区別された
「内廷費」が支出される。その上、「海外訪問」の場合は、
皇室の公的活動などの為に支出される「宮廷費」が当てられる。
従って、先の引用部分は全く見当外れの記述と言う他ない。それにしても、総合雑誌を代表する『文藝春秋』の校閲すら、
このような初歩的な誤りをそのままスルーしてしまったことは、
少し残念な気がする。もう一点だけ言及しておくと、
小泉純一郎内閣当時の「皇室典範に関する有識者会議」
(この時は私もヒアリングに応じた)に関わる記述の中で、
秋篠宮妃紀子殿下ご懐妊の報道を巡って、次のように書いている。
「(ご懐妊のニュースは)これまでの
有識者会議での議論を覆すには充分な内容だった」岩田氏は当時の議論において、今後、
皇室に男子がお生まれになる可能性は先刻、
“織り込み済み”だった事実をご存知ないようだ。報告書にも
「今後、皇室に男子がご誕生になることも含め、
様々な状況を考慮したが…」(20ページ)と明記してあるのだが。
現に、悠仁親王殿下お一方のご誕生によっても皇室の危機は
(当たり前ながら)何ら解決されず、まさに今、政府・国会は
これまで無責任に“先延ばし”を続けて来た皇位の安定継承への
取り組みを、のっぴきならない課題として突きつけられている
ではないか(それでも政府は更に先延ばしを図っているが)。この辺りは勿論、校閲の守備範囲を越えている。
岩田氏は報告書も読まずに、安倍氏の説明を
鵜呑みにしてしまったのだろうか。それを又、鵜呑みにする読者が出て来る
虞れがあるので、ここで指摘しておく。【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/
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