東京大学入学式における映画監督・河瀨直美氏の祝辞を批判した細谷雄一慶應大教授を、「表現者クライテリオン」7月号の巻頭コラム「鳥兜」が「ヒステリックな魔女狩り」と非難した件について、さらに検証をしていきます。
鳥兜筆者は、細谷氏の「国連総会決議で賛成141対反対5でそのウクライナ侵略が非難され、ブチャ虐殺で国連人権理事会でロシアが資格停止された直後に『ロシアの正義』に触れるとは。」という発言に対して「正義を語るのに『多数決』の印籠を必要とする御仁」と罵倒しました。
要するに鳥兜筆者は、こう言いたいわけです。
「国連の多数決で決まったからロシアは悪」なんて、単純なもんじゃない!
正義は「多数決」では決まらない! ロシアにはロシアの正義がある!
しかし、国連総会における「賛成141対反対5」という大差の決議を、そんなに軽く見ていいのでしょうか?
細谷氏は、鳥兜筆者が引用したツイートに続けて、こうツイートしています。
国際社会における正義は多元的であり、それを主権国家体系が支えている以上は国連という緩やかな協議体、合議体によってかろうじて国際社会で受け入れ可能な正義が生成されている。なぜそれを看過するのか。殺人やレイプをした人にも「正義」はあるかもしれないが、それを罰せずには社会は機能しない。
— Yuichi Hosoya 細谷雄一 (@Yuichi_Hosoya) April 13, 2022
「国際社会における正義は多元的」、つまりロシアにはロシアの正義があるということくらい、細谷氏は当然の前提としているのです。
しかしその多元的な正義をそのままにして、各国がそれぞれの正義を主張していたら、果てしなく正義と正義が衝突して、収拾がつかなくなってしまいます。
だからこそ、「国連という緩やかな協議体、合議体によってかろうじて国際社会で受け入れ可能な正義が生成されている」のであり、現状ではそれ以外に国際秩序を維持する手立てはないのです。
それゆえに国連総会決議の「賛成141対反対5」というのは非常に重い意味を持つのに、「なぜそれを看過するのか」と細谷氏は言っているわけです。
「国連総会決議の多数決なんかで『正義』は決まらない! ロシアにはロシアの正義がある!」なんて言い出したら、国際秩序は崩壊します。
「殺人やレイプをした人にも『正義』はあるかもしれないが、それを罰せずには社会は機能しない」と細谷氏が言っている、まさにそのとおりなのであって、ここは殺人犯・レイプ犯の「正義」にも耳を傾けよなんて言ってる場合ではないのです。
鳥兜筆者は、自分が国連総会決議の「多数決」の意味を全く理解していないレベルだということも自覚せず、細谷氏がただ「多数決」というものを「水戸黄門の印籠」のように崇め奉っているものと思い込み、細谷氏を「多数決」がなければ「正義」とは何かを考えることもできない、思考停止の人物だと評したのです。
ここまでデタラメな名誉毀損はないでしょう。
バカが自分をバカと気付かぬまま、バカな知識とバカな思考で他人を批評したら、名誉毀損だらけになってしまうのです。
【ロシベタクライテリオン論破祭り】
第1回 ウソついて逃げるクライテリオン藤井聡!
第2回 ロシアのプロパガンダを「多面的な解釈」と強弁する藤井聡!
第3回 道路交通法と国際法の区別がつかない藤井聡!
第4回 藤井聡の言う「多面的解釈の外交」とは何か?
第5回 NATOの東方拡大はアメリカの「裏切り」か!?
第6回 確かにアメリカは悪い! けど…?
第7回 ロシア経済崩壊の「主犯」は誰か?
番外編 藤井氏動画コメントに見る、クライテリオン読者・支持者の「程度」
第8回 藤井聡が依拠する、伊藤貫の「国際情勢認識」の正体
第10回 藤井聡氏に小学校の国語のテスト。
第11回 クライテリオンは朝日と産経の「悪いとこ取り」
第12回 ブチャ虐殺を「フェイク」だと思っていた藤井聡
第13回 「魔女狩り」という言論封じワード
第14回 もう一度、道交法と国際法の違いについて。
第15回 藤井聡氏の国際法軽視は西部邁氏の悪影響か?
第16回 明日よりクライテリオン論破祭り、最終章!
第17回 河瀨直美の祝辞はどう見ても「どっちもどっち論」「相対主義」(しかも日本絶対悪主義)だ!
第18回 篠田英朗氏は河瀨直美氏を「魔女狩り」したのか?
第19回 池内恵氏は河瀨直美氏を「魔女狩り」したのか?
第20回 細谷雄一氏は河瀨直美氏を「魔女狩り」したのか?