これまで私は、藤井聡氏を始め「表現者クライテリオン」の言論人に対して度々「それでも西部邁の弟子か」と思ってきたのですが、こと国際法に関する認識については「やっぱり西部邁の弟子だ」と感じます。それも、悪い意味で。
東京裁判において、連合国の判事の中でただ一人、国際法に基づいて「被告全員無罪」の判決を書いたインドのラダ・ビノード・パール博士に関して、2006年、中島岳志という学者(当時・北海道大学准教授、現・東京工業大学教授)が『パール判事』という本を書き、これがメディアや学者の間で大変な評判になりました。
ところがこの本を読むと、ありえないデマばかりが書かれていました。
筆者の中島は明らかにパール判決書を大して読みもせず、せいぜい講談社学術文庫版の判決書の巻頭に収録された解説を参考にした程度で、パール判事とその判決書を戦後自虐史観の文脈に沿うように、歪曲して書いていたのです。
しかしサヨクマスコミや学者も、誰ひとりパール判決書を読んでいないのでその真贋を見抜けず、ただ「右派」がいう「日本無罪論」というパール判決の解釈は間違いで、実はパール判事も日本罪悪史観だったのだと主張する本を「学者」が書いたものだから、それだけで大喜びしてもてはやしたのでした。
この事態によしりん先生は怒り、パール判決書の総解説を含む370ページにも及ぶ大冊『パール真論』を出版、パール判決書は『日本無罪論』であることを論証し、中島のデマ本を粉砕しました。
ところがその間に中島は「保守」を名乗って西部邁に近づくようになり、西部氏と共著も出すようになっていました。
そして西部氏は、イラク戦争の時には世界は国際法の網の目が張り巡らされていると言っていたはずなのに、ただ中島岳志を守るため、「パール判決書論争は無意味」ということにしようとして、「国際法なんかしょうもない」といった発言をするようになってしまったのです。
その後年の西部氏の発言を、藤井氏らは学んでしまったのでしょう。
私も本当はこんなことは書きたくなかったのですが、事実は事実ですし、藤井氏らが国際法を小馬鹿にする態度には、西部氏の悪影響を感じざるを得なかったので書くことにしました。
それにしても藤井氏らは、西部氏からこんな受け継いじゃいけないところまでしっかり受け継いでいるのに、なぜ女性天皇・女系天皇を認めるという西部氏の見解は一切受け継がなかったのでしょうね?
日本の保守だったら、皇統に対する見解こそが最も重要であるはずなんですが。
【ロシベタクライテリオン論破祭り】
第1回 ウソついて逃げるクライテリオン藤井聡!
第2回 ロシアのプロパガンダを「多面的な解釈」と強弁する藤井聡!
第3回 道路交通法と国際法の区別がつかない藤井聡!
第4回 藤井聡の言う「多面的解釈の外交」とは何か?
第5回 NATOの東方拡大はアメリカの「裏切り」か!?
第6回 確かにアメリカは悪い! けど…?
第7回 ロシア経済崩壊の「主犯」は誰か?
番外編 藤井氏動画コメントに見る、クライテリオン読者・支持者の「程度」
第8回 藤井聡が依拠する、伊藤貫の「国際情勢認識」の正体
第10回 藤井聡氏に小学校の国語のテスト。
第11回 クライテリオンは朝日と産経の「悪いとこ取り」
第12回 ブチャ虐殺を「フェイク」だと思っていた藤井聡
第13回 「魔女狩り」という言論封じワード
第14回 もう一度、道交法と国際法の違いについて。