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高森明勅
2022.5.27 09:00皇統問題

秋篠宮殿下が即位を辞退されることは制度上、可能である

私は僭越ながら、以前から「皇嗣」秋篠宮殿下が
即位を辞退されるお気持ちだろう、との推測の述べて来た
(たとえばプレジデントオンライン「高森明勅の“皇室ウォッチ”」
4月29日公開記事など)。
https://president.jp/articles/-/56836

先頃、刊行された江森敬治氏『秋篠宮』も、
私の推測を補強するものだった
(同「高森明勅の“皇室ウォッチ”」5月23日公開記事を参照)。
https://president.jp/articles/-/57753

ところが、“即位辞退”ということが果たして制度上、可能かどうか、
疑問に思っている人がいるようだ。
そうした疑問を持ってもおかしくない。
皇室典範に“即位辞退”の明文規定は無いからだ。

しかし、実際は可能と考えられる。
それは、皇室典範第3条に以下のような規定があるからだ。

「皇嗣に、精神若しくは身体の不治の重患があり、
又は重大な事故があるときは、皇室会議の議により、
前条に定める順序に従つて、皇位継承の順序を変えることができる」

つまり、「精神若しくは身体に不治の重患」が“無い”場合でも、
「重大な事故」を理由として「皇室会議の議により」皇位継承の
順序を変更することが可能となっている。

問題は「重大な事故」の中身だ。
これについて、元最高裁の判事だった園部逸夫氏が
以下のような指摘をされている(『皇室法概論』57ページ)。

「例えば仮に皇嗣が皇位継承を拒否するという
意思表示を公の場で行った場合が『重大な事故』に当たると
解することが可能であれば、皇嗣は自らの意思により皇位を
継承しないという選択を行うことが可能になると
解されることになる」

法律家らしい慎重な言い回しながら、
趣旨は明確で、説得力のある解釈だろう。

その場合、今の皇室典範の規定のままなら、
「前条に定める順序に従つて」なので(第2条第1項第6号の規定により)
秋篠宮家のご長男、悠仁親王殿下が直ちに即位されることになる。

もしそのような形になれば、天皇のお子様でない方
(秋篠宮殿下が即位されなければ悠仁殿下は天皇のお孫様〔皇孫〕
という位置付け)が珍しく即位されるという、
江戸時代の光格天皇(第119代)以来の“異例”となる。

しかも、今上陛下には敬宮(としのみや、愛子内親王)殿下
というお健やかでご聡明というレベルを更に越えておられる、
光輝くようなお子様(皇子)がおられるにも拘らず。
果たして…。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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