皇室典範における皇太子・皇太孫と傍系の「皇嗣」との違い
皇室典範に次のような規定がある(第11条第2項)。
「親王(皇太子及び皇太孫を除く。)、内親王、王、女王は、
前項の場合の外、やむを得ない特別の事由があるときは、
皇室会議の議により、皇族の身分を離れる」(カッコ内は原文のママ)ここに「前項(同条第1項)の場合」とあるのは、
15歳以上の内親王・王・女王が“自らの「意思」によって
”皇籍を離脱するケースを指す(もちろん、この場合も皇室会議の同意は必要)。と言うことは、こちらは“ご本人の意思に関わりなく
”皇室会議の議決だけで、当該皇族(皇太子・皇太孫を除く全ての
親王・内親王・王・女王が対象になり得る)の皇籍離脱を
可能にする制度ということだ。では「やむを得ない特別の事由」とは何か。
法制局(内閣法制局の前身)の「皇室典範案に関する想定問答」は、
以下のように説明している。「懲戒に値する行為があった場合その他皇族として
その地位を保持することを不適当とする事情をいふ。
皇族の数を調節する必要を生じた場合亦(また)これに当るであらう」国民感覚からすると畏れ多い印象を受ける。
しかし、法的に万全を期すためにはやむを得ない規定だろう。ここで注目すべきなのは、同項の適用対象から除外されているのが、
皇太子・皇太孫(皇嗣であられる天皇のお子様〔皇子〕・お孫様〔皇孫〕、
つまり直系の皇嗣)“だけ”である事実だ。
これを言い換えると、同じ「皇嗣」であっても“傍系”の
皇嗣は典範上、例外扱いはされない(!)ことを意味する。こうした直系の皇嗣(皇太子・皇太孫)と傍系の皇嗣の
皇室典範における位置付けの違いからも、後者の場合は理念上、
次代の天皇として即位されることが必ずしも確定した立場では
ないことが分かる。【高森明勅公式サイト】
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