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高森明勅
2022.1.26 09:00皇統問題

自民党の茂木敏充幹事長は皇室に悪意を抱いているのか?

去る1月24日、自民党は皇族数の確保などについて
検討する初めての懇談会を開いた。
その会合後、茂木敏充幹事長は以下のように述べた。

「ある意味、ご意向をお持ちの皇族方がいらっしゃらない状況で、
急に皇室典範の改正なり、また、特例法を作る
ということはなかなか想定しがたい」と
(TBS NEWS1月24日、21時20分配信)。

これは驚くべき発言ではないか。

“皇位の安定継承”どころか、大幅に後退した
“皇族数の確保”の為でさえ、「皇室典範の改正なり、特例法を作るということ」
は欠かせない。

それが先送りできない「喫緊の課題」ではあることは、
さすがに有識者会議の報告書でも繰り返し強調している。
何より、国会自身が全会一致で議決した皇室典範特例法の附帯決議には、
「安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家等」の検討が
「先延ばしすることはできない重要な課題である」と
明記していたではないか。

しかも、「ご意向をお持ちの皇族方がいらっしゃらない状況」とは何事か。

上皇陛下ご自身が、全国民に示された
平成28年8月8日のビデオメッセージの中で、皇位の安定継承を願う
お気持ちを疑問の余地なく明らかにされているではないか。

それ以前から、側近に仕える侍従長の発言や宮内庁から
内閣への働きかけを通して、皇位の安定継承を願う
皇室の「ご意向」は知られていたことだ。

それをひたすら先延ばしし続けておきながら、
政府の検討結果が(極めて不十分な内容ながら)伝えられた今、
非礼にも皇室のお気持ちをねじ曲げて、何を言い出すのか
(これも虚偽に基づく皇室の“政治利用”だろう)。

もとより、内親王・女王がご結婚後、配偶者が
国民男性のままでお子様も国民といった無理筋の制度は
望んでおられないだろうし、旧宮家系男性を養子に迎えようとする
宮家もにわかに思い浮かばない。

しかしそれは、国権の最高機関とされる
国会の良識に従って是正すれば良いだけの話だ。
そもそも、当事者の立場になって想像すれば、
ご自身の将来が引き裂かれた状態のまま、
長年放置され続けていることの“残酷さ”に気付くはずだ。

先の山東昭子参院議長の
「いつまでとか、余り早くというようなことではなしに、
やはり慎重に」という発言と共に、国会での議論の先行きに
不安を抱かせる。

政界にはこの期に及んでもなお、
問題への“着手”すら更に先延ばししようと
企んでいる人々がいるらしい。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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