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高森明勅
2021.11.19 10:16皇統問題

「旧皇族」で天皇陛下よりお若い方は既婚女性だけという事実

「旧皇族」という言葉が、相変わらず“間違って”使い続けられている。

《産経新聞1面トップ記事》

例えば、いささか旧聞に属するが、自民党総裁選の最中、
産経新聞(9月9日付)の一面トップに「自民党総裁選/高市(早苗)氏
『旧皇族復帰案を支持』」という記事が載った。

将来に向けた皇位の安定継承の為の方策なら、対象となる「旧皇族」は当然、
天皇陛下よりお若くなければならないはずだ。
しかし、改めて言うまでもなく、旧皇族(=元皇族)は皇族として
お生まれになって、その後、皇族の身分は離れられた方“だけ”に限られる
(令和3年2月26日、衆院予算委員会第1部会での池田憲治宮内庁次長の答弁ほか)。

だからこそ、「復帰(元の位置、状態に戻ること、元通りになること)」
という表現になる。
ところが、現在、天皇陛下よりお若い旧皇族は、
国民男性とのご結婚によって皇族の身分を離れられた元内親王や
元女王だった方々しかおられない。先頃、ご結婚され、
アメリカに渡られた眞子さまもその例に含まれる。

《お粗末な誤用》

しかし勿論、それらの方々に今更、皇族の身分に「復帰」して戴く訳にはいかない。
皇室と国民の“区別”を曖昧にするからだ。
皇室典範第15条は、その為の規定に他ならない。
こんな基礎知識すら欠けているのだろうか。

そうでなければ、「旧皇族」「復帰」という、同方策にとって最も肝心で、
厳格に用いられるべきキーワードが、元は皇族だった方の子や孫など
(1分1秒も皇籍にいたことがない人々!)にまで不当に拡大して、
“いい加減に”使われ続けていることを意味する。

それは、本来の旧皇族に対して、
とても非礼な振る舞いと言わねばならない。

高市氏本人だけでなく、この記事を書いた記者や校閲担当者も、
そのことに気付いていないらしい。

新聞の一面トップ記事に、これほどお粗末な誤用が
平然と載せられているのは、情けない。
先頃、保守系の論者の文章の中で、「元皇族」と「旧皇族」を
“別の”概念の言葉として使っているのを見かけた(『日本の息吹』11月号)。
もはや何をか言わんやだ。

追記

11月16日発売の「週刊女性」(11月30日・12月7日合併号)に、
私のコメントを軸にした「悠仁さま “未来の天皇”という重責を逃れる『皇籍離脱の道』」
という2ページの記事が掲載されている。
なお、11月17日のブログで「高森稽古照今塾」とあるべき箇所(2ヵ所)の
「今」が抜けていたので、ここに訂正する。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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