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笹幸恵
2021.11.3 08:16皇室

「SPA!」倉山満は現代と過去の区別がついていない。

週間SPA!(11/9.16号)で連載されている
倉山満の「言論ストロングスタイル」、
皇室のこととなると途端に支離滅裂になる。

まずは小室圭さん「上皇」発言。

もし女系天皇が認められたら、小室圭氏は皇族になる。
眞子内親王殿下との間の子供は皇族、天皇になれる。
その暁には、「天皇の父」として
上皇になる資格が生じる。

ええッ、天皇の父として上皇????
いつの時代の話ですか、それ。
現在の皇室典範には、天皇の父を上皇と定める規定はない。
ちなみに現在の上皇陛下は、特例法によって定められたからで、
天皇の父が自動的に上皇になるわけではない。
ここ、過去と現代の区別がついていない、その1。

そもそも、「圭上皇」が誕生することをさも不吉なことで
あるかのように書いているが、眞子さんは皇室を離れられたのだ。
圭さんはもとより一般人。
意味のない仮定の話で、悪意ある妄想としか言いようがない。

で、そのあと、皇族の男女関係がもたらした歴史を
延々と綴っている。
ひとことでまとめると、
「俺はこんなに詳しい」という知識自慢。
こういう諸問題が、さも現代に起こり得るかのように
披歴しているのだけど、近親相姦とか公家とか、
過去と現代の区別がついていない、その2だ。

次に、眞子さん、小室圭さんへのバッシングのひどさに
「皇族にもプライバシー権はないのか」という声を紹介し、
「正すべきは正すべきだ」と書いているのに、
このあと、こう断じているのだ。

皇族に人権はない。だから尊い。
そして今、公称2681年の歴史を悠仁殿下が
負われている。ここに価値を認めないなら、
いかなる理屈も通じまい。皇位は一度も例外なく、
男系継承されてきた。一部には、非人間的な面もある。
世襲の常だ。では、先例を無視、歴史を変えるならば、
世襲をやめるか?

……極論の暴論とは、こういうことをいうのだろう。
まるで本当にタリバンだ。
人権がないから尊いって、本気か。
尊皇心が肥大化・先鋭化して、皇族が
生身の人間であるという想像力すら、はたらかないらしい。
いや、倉田満が崇め奉っているのは、皇室ではない。
男系の「血」だ。
どう考えても女系の天皇だとしたほうが道理が通るケースも
あるのに、それは断固認めない。
天皇という地位を重視しているのではなく、
男系の血を重視しているのでなければ、説明がつかない。

最後には「悠仁殿下を御守りするしかない」と
締めくくっているのだけど、それでいて
「非人間的な面もある」「世襲の常」などと
よく言えたもんだなと思う。
要するに悠仁殿下に「非人間的な面を甘んじて受けろ」と
言っているに等しいではないか。
それで「御守りする」など、自己満足以外の何物でもない。

そして「先例を無視」することが「歴史を変える」
ことだと思っているようだけど、これも本気か?
あまりに短絡的な発想だ。
平成の時代には、皇室が国民とともに変化してきた。
それをリアルタイムで見てきているはずだが?
表面的な知識があり過ぎて、皇室を神聖化し過ぎて、
ここでも過去と現代の区別がつかなくなっている。その3。

そしていきなり「世襲をやめるか?」という
ゼロヒャク思考。
柔軟性、バランス感覚のカケラもない。
上皇陛下、上皇后陛下の抜群のバランス感覚から
何も学んでいないのだな。

「血」しか見ていないから、こうなってしまうのだ。
笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

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