秋篠宮家のご長女、眞子内親王殿下のご結婚による
皇籍離脱に伴う一時金について、今回だけは例外として
支給されない見通し、との報道がなされている
(被占領下にいわゆる旧宮家の皇籍離脱が行われた際、
GHQの意向で元軍人だった方々には一時金が支給されなかった)。眞子殿下ご自身が辞退されるご意向なのを踏まえて、
内閣法制局などで法的な検討も加えた結果、
一時金を受け取られることは義務とまでは言えないとの考え方から、
不支給の方向で調整しているという。《法律は一時金不支給を予想していない》
しかし、そのような宮内庁の対処の仕方には疑問がある。
先ず、法解釈として無理があるのではないか。前にも指摘したように、皇族の身分を離れられる際に
支給される一時金は、当事者への支援というより、
「皇族であつた者としての品位保持の資に充てるために」
(皇室経済法第6条第1項)支給されるものだ
(だからこそ、懲戒的な理由で皇籍を離れられる方にも
支給されるルールになっている。同条第7項第1号)。これは、皇室それ自体の尊厳と名誉を守ることが目的だ。
従って、この法律の趣旨に照らす限り、
「皇族であつた者としての品位保持」は、当事者にとって義務と言えるだろう。
その「品位保持」の為には、しかるべき金額を支給することが
欠かせないという考え方を前提として、一時金の制度が設けられている。ならば、それを受け取ることも同じく義務と見るのが、
素直な理解の仕方だろう。
同法に一時金の支給を辞退する場合の規定が全く欠けているのも、
そのように理解してこそ整合性を持ち得る。《悪しき前例を作るな》
次に、眞子殿下が一時金を辞退されるご意向と伝えられる点も、
決してご自身の自発的なお気持ちによるのではないと拝察される。
メディアや国民の中から、一時金制度への無知に基づき、
辞退を強要するような声が出ていることが、その原因であるのは明らかだ。
ならば、宮内庁は制度の本旨を周知する為に力を尽くすのが本筋だ。皇室の尊厳と名誉の為に“義務”として受け取るべき一時金を、
ご本人のご意向という、一見もっとらしい理由付けで恣意的に
不支給として、事態を糊塗するような対応をするべきではない。もし、そのような悪しき前例を作れば、今後、個別の皇族に対し、
一部のメディアや声の大きな国民が増長して、
上から目線で勝手な“勤務評定”を行い、一時金辞退を迫り、
事実上、その支給、不支給を左右するような事態へと
エスカレートしかねない(それは更に一時金だけにとどまらず、
皇族としてのあらゆる待遇へと拡大する虞れすらある)。【高森明勅公式サイト】
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