『海幹校戦略研究』第11巻第1号に掲載の論文
「日本と諸外国の防衛法制の比較研究」(熊取谷行1佐ほか)によって、
以下の実情が明らかになった。「他国の場合は憲法で軍隊をしっかり位置付ける一方、
その権限や行動を縛る国内の法律を持たないのに対し、
日本だけは憲法には何の規定も置かず、
自衛隊の権限や行動は全て法律による制約を押し付けられている」憲法での位置付けと法律での権限や行動の制約が、
ちょうど日本と諸外国では逆になっている。ここで注意すべきは、それが決して偶然ではないということだ。
憲法に「軍隊」の地位、役割、任務等の規定があれば、
軍隊は“行政の外”に置かれるので、その権限や行動は
国内の法律に縛られない。逆に憲法にその規定が無ければ、
行政の外に位置する軍隊の保持は認められない。
よって、たとえ武装した実力組織でも、法治国家の
「行政の基本原則」にのっとり、権限や行動は全てに
法律に根拠を求める他ない。そこに、自衛隊の「世界で唯一の特殊性」があった。
しかし、そのような武装しただけの“役所”では、
変幻自在な侵害行為、武力攻撃に対応できず、
「国家防衛の役割」を果たせない(=個別的自衛権を十分に行使できない)。
だからこそ、あらゆる国の軍隊は行政と区別されている。
かくてわが国の場合は、集団的自衛権以前に、
“個別的”自衛権すら満足に行使できない状態に置かれ続けている。
それを補って来たのが、強大なアメリカの軍事力に他ならない。日本の極端な対米依存の根っこにあるのは、
このような構図だった。【高森明勅公式サイト】
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