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高森明勅
2021.7.5 12:23皇統問題

天皇から見捨てられない程度には国民が配慮すべきという指摘

リベラル系の憲法学者の木村草太氏が次のような指摘をされていた。

「現在の皇室典範は、皇位継承順位を持つ人が
極めて少なくなるように作られています。
天皇の子どもであっても、女性だというだけで排除される。
子どもの数は限られていますから、数人が拒否すれば、
皇位継承者は途絶えてしまう。

天皇から見捨てられない程度には、国民は天皇に配慮するような
状況でないと成り立たない。
そんな制度として、日本の天皇制は作られている。
こうして考えてみると、日本の天皇制は、人間性から生じる問題に対して
極めて脆弱な制度として、あえて作られているのではないかという見方もできます。
国民の皆さんは、天皇に見捨てられないレベルの国民でいてください。
天皇も安易に国民を見捨てないレベルの徳を持っていてください。
そんな前提で作られている。

道路交通法のように、ほっとくと悪いことをする人がいるだろうという
前提で作られていない。
女帝について、私は基本的にそれを認めるべきだと考えています。
ただ、平成の天皇が退位するときに、右派とされる方々が、
『天皇はこうあるべき』に拘泥して、天皇の体調にすら配慮しない議論を
展開するのを見ていて、
『犠牲者をできるだけ減らすためには、
女系を認めない方がいいのではないか』という思いも生まれました」
(『むずかしい天皇制』)

一般には、余り気付かれない視点だろう。
しばしば「右派とされる方々」ほど、天皇・皇室の存在それ自体を自明視して、
僅かな敬意も感謝もなく、その将来を真剣に心配することも
稀なようにみえるのは、残念だ。

「天皇から見捨てられない程度には…」という発想は微塵も無いだろう。
「我々が天皇を見捨てることはあっても、天皇が我々を見捨てることは絶対ない」
という、すこぶる手前勝手な甘えの上で、
ただ胡座(あぐら)をかいているだけではないか。 

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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