共同通信が以下のような記事を配信した(6月16日、20時46分)。
「安定的な皇位継承策を議論する有識者会議(座長・清家篤元慶応義塾長)は
16日の第7回会合で、皇位継承資格を男系男子に限定する皇室典範の規定を
尊重し、現在の皇位継承順位を変更しない方針を確認した。これに伴い、女性・女系への資格拡大は見送る。
皇族数確保のため、女性皇族が結婚後も皇室に残る『女性宮家』の創設と、
旧宮家(旧皇族)の男系男子孫による皇籍取得の是非の2案を軸に
今後の議論を進める。
継承順位の維持は、清家氏が会合後に記者団に明らかにした。
現順位を見直せば皇室制度が動揺しかねないため、
混乱を回避すべきだと判断した」《何の為の有識者会議か?》
これは驚き。
そもそも同会議が設けられたのは何故か。上皇陛下のご譲位を可能にした特例法の附帯決議で、
政府が「安定的な皇位継承を確保するための諸課題」等について
「整合性が取れるよう検討を行い、その結果を、速やかに国会に報告すること」
を求めた。それに真正面から応えるという、政府の約束を果たす為に他ならない。
会議の正式名称も「『天皇の退位等に関する皇室典範特例法に対する附帯決議』
に関する有識者会議」だ。まさに、皇位の安定継承を目指す現実的な方策を、
約束通り真剣に探る為だったはずではないか。その際、「現在の皇位継承順位を変更しない方針」であれば、
採用できる“実効的な”方策は、事実上、無くなる
(目先だけの「皇族数確保」で誤魔化すのがせいぜい)。
今さら「皇室制度が動揺しかねない」とか、逃げ口上を誇大に言い募って
責任を放棄するのなら、一体、何の為に有識者会議を設けたのか。記事にある「皇族数確保」は、附帯決議では直接、言及していない。
皇位の安定継承の為に、“付随的に”要請される事柄に過ぎない。
肝心の「安定的な皇位継承策」を見送って、目先だけの「皇族数確保」で
お茶を濁すという、清家座長がおっしゃる方向性がもし本当ならば、
国会決議への裏切りであり、有識者会議の設置目的そのものの
否定以外の何物でもない。《女性宮家・旧宮家「2案」の問題点》
これまでも繰り返し述べて来たように、「女性宮家」を創設しても、
女性・女系天皇とセットでなければ、皇位の安定継承には何ら寄与しない。
女性宮家のお子様は、男女いずれにせよ、皇位継承資格を持ち得ないからだ。
そのような差別的な扱いを受ける宮家に、配偶者として入ろうとする
国民男性が現れるかも、不安だ。一方、「旧宮家案」は難題山積の上、憲法が禁じている「門地による差別」
に当たる可能性が高い。
制度として致命的な難点がある。
万が一それを強行すれば、訴訟のリスクすら抱え込むことになろう。
いずれにせよ、皇室への国民の素直な敬愛の気持ちを、
大きく損なう虞れがある。今、皇嗣とされている秋篠宮殿下は、畏れ多いが、
ご年齢を考えると、実際には即位されない可能性が高いだろう。
もし継承順位が今のままなら、むしろ「混乱」を招きかねない。天皇陛下には、お健やかでご聡明なお子様が、現にいらっしゃる。
なのに、「女性だから」という“だけ”の理由で、
皇位継承資格が認められない。
将来に向けた皇位の安定継承を犠牲(!)にしてまで、
そんな旧時代的なルールに固執する動機が理解できない。【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/
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