日本に主権が無かった被占領下に制定された日本国憲法。
果たして「憲法」としての正当性はあるのか。
この本質的な疑問への回答として、長く通説的な位置にあったのが
宮澤俊義氏が唱えた「8月革命説」だった。①わが国が、“国民主権”への転換を求める「ポツダム宣言」を
受諾したことで、昭和20年8月14日の時点において既に法的な意味で
“革命”が起きていた。②その革命の結果、主権者となった国民が定めた憲法だから正当だ。
…という意見だった。しかし、率直に言って①も②も成り立たない。
①ポツダム宣言(10・12項)が国民主権への転換を求める
内容だったという解釈は、明らかに無理。
同宣言10項には「民主主義的傾向の“復活”強化」とあって、
帝国憲法下に既に「民主主義的傾向」があった事実を認め、
その「復活」を求めている以上、当然ながらそこに「革命」の根拠を
求めることは出来ない。又、12項の原文には「the Japanese people」とあり、
これは文脈上、天皇に対する“国民”を意味するものではなく、
同宣言に出てくる「連合国(占領軍)」に対する「(天皇も国民も含めた)
日本人(日本国人)」と理解する以外にない。従って同項は、建前として、一先ず“民族自決の原則”を保障したものだ。
国民主権をことさら要請していない。②しかも、同宣言受諾後、日本は暫く被占領下に置かれ、
その状態のまま憲法が制定された以上、“主権者たる”国民が
憲法を定めた…などという事実はどこにも存在しない。「8月革命説」は虚構に過ぎない。
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