現代の国家間の戦い(現代戦)において重要な位置を占める
「情報戦」。その情報戦の中でも、「影響工作(IO=Influence Operation)」
が注目されているという。
影響工作が効果を示した典型的な実例は2016年のアメリカ大統領選挙。ドナルド・トランプとヒラリー・クリントンが争った。
この時、どのような事態になったか。「ロシアはドナルド・トランプ候補を勝たせる目的で、
ヒラリー・クリントン候補に不利になる工作をツイッター(Twitter)
やフェイスブック(Facebook)などの
ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)
を駆使して行いました。…クリントン候補が人工肛門を装着しているとか、
腹心の女性スタッフと同性愛にあるとかフェイクニュースを
流し続けました。
そして、民主党本部のサーバーに侵入し、大量の情報を窃取し、
その情報をウィキリークスを通じて絶妙なタイミングで漏洩しました。
このロシアの影響工作は、明らかにクリントン候補にダメージを与え、
結果としてトランプ大統領の誕生が実現したのです」
(渡部悦和・佐々木孝博『現代戦争論ー超「超限戦」』)。勿論、この時のトランプ前大統領の勝利を、
ロシアの影響工作だけによって説明するのは、乱暴だ。
ことさらロシアの工作が指弾されていない次の選挙でも、トランプは
(結果的に敗れたものの)多くの票を集めていた。しかし、仕組まれた影響工作の成果を、過度に軽視しても、
真実を見誤る。
このような工作は、大統領選挙の時だけではなく、又、
工作対象国がアメリカに限る訳でもない。
その上、ロシアだけがこのような情報戦を展開しているということでは、
勿論ない。情報戦の場合、同盟国や友好国から仕掛けられている可能性もある。
わが国の場合、特に中国によるケースを警戒しなければならないだろう。
中国の現代戦への考え方は、喬良・王湘穂の共著『超限戦』に
ストレートに表現されている。「目的のためなら手段を選ばない…制限を加えず、あ
らゆる可能な手段を採用して目的を達成する」
「戦争以外の戦争で戦争に勝ち、戦場以外の戦場で勝利を奪い取る」と。【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/
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