ちばてつや氏の『わたしの金子みすゞ』から
金子作品を3編、追加して紹介する。
こころ
お母さまは
大人で大きいけれど、
お母さまの
おこころはちひさい。だって、お母さまはいひました、
ちひさい私でいつぱいだつて。私は子供で
ちひさいけれど、
ちひさい私のこころは大きい。だつて、大きいお母さまで、
まだいつぱいにならないで、
いろんな事をおもふから。
星とたんぽぽ
青いお空の底ふかく、
海の小石のそのように、
夜がくるまで沈んでる、
昼のお星は眼に見えぬ。
見えぬけれどもあるんだよ、
見えぬものでもあるんだよ。散つてすがれたたんぽぽの、
瓦のすきに、だァまつて、
春のくるまでかくれてる、
つよいその根は眼に見えぬ。
見えぬけれどもあるんだよ、
見えぬものでもあるんだよ。
こだまでせうか
「遊ぼう」つていふと
「遊ぼう」つていふ。「馬鹿」つていふと
「馬鹿」つていふ。「もう遊ばない」つていふと
「遊ばない」つていふ。そうして、あとで
さみしくなつて、「ごめんね」つていふと
「ごめんね」つていふ。こだまでせうか、
いいえ、誰でも。
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